主人公、衣類生産の問題にけりをつける
カイト領内は今町中のあらゆる場所で建設ラッシュだ。先日立てた都市計画プランをみんなに見せて、若干の手直しを加えたうえで建設はスタートした。
しかし、都市計画プランを見せたときのみんなの顔の疲労感というかなんというか…それは凄いものがあった。
「また…また大量に木を切らねばなりませんのね…」
と、ぼやくビシスをはじめ、
「レンガ、レンガ、レンガ、レンガァァァァァ」
と、意味不明な雄叫びを上げるデューク。
というか、それ以外の面子は意外と平気な顔をしていたが、その根底にあるのは「どうせ二人とその部下が何とかするんでしょ?」という、そして併せて「俺は(私は)関係ない」という、まぁ情熱ドラマでよくある「1 for All ! キラッ」的なノリは全くないわけで。
さらにデュークをはじめとした人間の兵士達にはたっぷりどっさり建物建設に必要そうな書籍を与えた。俺の脳味噌ではおそらく理解できないだろうが、きっと優秀な彼らは見事理解して事に当たってくれると信じている。
というわけで、今は大量に必要となるレンガの生産量を上げつつ、並行して重要施設を作りつつ…と、日々奮闘の毎日である。
さて、今俺はミヨ、ヌイ、バティスタ、シーラとアーティファクトコアの前に来ている。
その目的はウッドゴーレムの生産。
ただ、いつものウッドゴーレムとはわけが違う。通常のウッドゴーレムは ”最低” その生産に木材が1トン必要となる。ポイントは何故1トンなのか?ということ。
というのも、木材1トンを使ったゴーレムというのは3メートルもある中々の巨大さなのだが、ウッドゴーレムの活用シーンからは、それ以上大きいウッドゴーレムが欲しいという時もあれば、もっと小さいウッドゴーレムが欲しいという時もある。
そして、今欲しいのは小型のウッドゴーレム。それも人間サイズの大きさがいい。
そのサイズのウッドゴーレムを求める理由。それはバナナの繊維を使った衣類を作るうえで、機織り作業をゴーレムに行わせる、ということ。
残念ながら、ネットショッピングで買えるレベルの機織り機では機械式のものは手に入れられなかった。じゃあ、人の手で頑張るかといえば、あれはかなり黙々とやり続ける作業で、かつそれを手動の機織り機で頑張ろうと思った日には生産性も低いし、人でもいる、というカイト領にとって嬉しくない結論になった。
じゃあ、それを休みを必要としないゴーレムで対応できないか?と考えた次第だ。ただ、3メートルもあるゴーレムに機織り機を扱わせるのは無理があるので、人と同じサイズのゴーレムが作れないか?という話になった。
そんな相談をシーラにしたところ…
「ああ、作れますよ?1トンの木材が必要というのは、一般論をお話ししただけですねぇ。」
という、いともあっさりとした回答が返ってきた。俺たちが必死に考えてきた時間は何だったのか?と言いたい。
「そうか…確認しなかった俺が悪いんだよな?そうなんだよな?」
毎度のことである。
ただ、大きさにかかわらずゴーレム製造に必要なMP 100ポイントの消費はかわらないということで、さっそく1体のウッドゴーレムを製造することにした。
「おお…本当に小さいな」
現れたのは170センチ程度の大きさのゴーレム。そして、さっそくそのゴーレムを機織り機に座らせ、作業を命令した。
すると…
スルスルススル、カッタン、スルスルスルスル、カッタン とリズミカルに機織りの音が聞こえてくる。
「凄い…むしろ、私たちより織るのが早いんですけど」
ヌイは何だか悔しそうだ。
「結果は良好操だな。あとは、これを何セット用意するかだが。」
と、俺は横目でバティスタを見る。機織り機はバティスタ達ドワーフに作ってもらった。材料自体は大したことはない。構造上のほとんどは木材だ。
「とりあえずは10セットほど用意しようと考えておったがの。」
「その程度でまずは様子見がいいかもしれないな。」
ゴーレムの機織りだけが早くなっても仕方ない。その前の工程として繊維の抽出と紡績があり、こちらは依然としてヌイ達の仕事なのだから、その部分の生産性と機織りの生産性を見比べながら数をコントロールしていくしかないだろう。
「十分ですね。機織りに割り当てようとしていたメンバーを他の作業に割り振ります。」
「ああ、頼む。機織りの次は染色だったかな?染料はあるのか?」
「当面は木や草からとるしかありませんね。だから地味な色になるのは覚悟してください。」
流石に赤や青といった色に染色するには材料がないようだ。勿論、ネットショッピングで買えるが、それでは恒常的な生産は行えないので、ぐっと我慢する。
「何はともあれ、これで一つ問題が解決しましたね。マスター」
「ああ、衣類の自給自足までもう一歩だな。」
続いて俺が訪れたのは、ゴブリン達の元だ。
ゴブリン達のリーダーはウルグという。元ザシュの配下だった男だ。俺自身もゴブリンを生産したが、リーダーには彼を推した。ウルグにはこの世界で生産されてから詰んだ経験というアドバンテージがある。
「やぁ、ウルグ。作業ははかどっているか?」
俺がウルグに与えたミッションは二つ。一つ目はワイルドボアの牧場の一切の作業。二つ目はカイト領周辺における毒物の調査だ。
「ああ、カイト様。作業は順調だ。ちょうどよかった。これを見てくれ。」
そうして見せられたのは植物の根っこのようなもの。何だろうか?と思ってみたが、どうにもよくわからない。
「これはかなり強力な毒をもつ植物の根っこだ。」
「おお、早速成果を出してくれたか。しかし、これをどうやって使うんだ?」
「乾燥させて粉上にしたものを水で解いて矢に塗るのさ。」
ニヤリと笑うウルグに若干悪寒がするが、頼もしい限りである。
「取り扱いには厳重注意だな。気を付けてくれよ?普通に食べてもアウトなんだろう?」
「ああ、口から摂取しても死ぬな。しかもこの毒には解毒薬がないはずだから、まず助からん。」
後で調べてみたところ、これトリカブトだ。トリカブトは通常温帯や寒冷地帯に生息するもので、亜熱帯的なこの地域の気候で育つのもファンタジーなわけだが、取り扱いは注意が必要にしても強力な武器が手に入ったものだ。
「ああ、それとな。今日来たのはほかでもない。探してほしい植物があるんだよ。」
そういって、俺は手に持った本(植物図鑑)をウルグに渡す。最近はインターネットで見させるよりも本を買った方が安上がりだということに気づいた。インターネットの1ページの閲覧でAPの消費ポイントが1。つまり、1万円分のインターネットショッピングができるAP消費と同じなのだ。どちらがお得かは言うまでもないだろう。
「ふむ、それで何の植物を探せばいいのだ?」
「これだよ。」
俺が図鑑で指さしたのは、所謂ゴムの木。熱帯に生息する植物だが、バナナやヤシの木があるこのあたりにあっても不思議ではない。
ゴムが手に入れば様々な生活品に利用できる。輪ゴムは勿論だが、一番大きいのは靴底だろうか。後々、車輪を多用するようになれば、タイヤを作るのもありだろう。
「ふむ」
ウルグは食い入るように図鑑を見ている。
「これと全く同じかどうかはわからんが、似たような木ならあったぞ?」
「本当か?」
「ああ、今度取ってきてやろう。」
「ああ、頼む。」
もしうまくいけば、バナナやタロイモ同様、ゴムの木を大量に育てて、いずれはゴムの生産に着手しよう。
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