主人公、念には念を入れる
さて、カイト達は?というと、ひたすら木炭を燃やし、そして風を洞窟に送り届けていた。なんせ洞窟の広さも中の温度も分かったものではない。
木炭は半日以上は燃やし続けるだけの量は持ってきたつもりだ。なんせ、ゴーレム2体に50人の人間と獣人たちの持ち物のほとんどが木炭だ。
木炭をすべて燃やしきったあと、カイトはさらに半日待った。その間もゴブリンの反撃があるかもしれないと思い、交代で警戒にあたらせた。
「・・・誰も来ないな。」
「やはり、全滅しているのではないでしょうか。マスター」
楽観的に考えればミヨの言う通りなのだが、ここで確実に息の根を止めておかないと後々面倒なことになる。カイトはそう思い、さらに半日待った。
「やはり誰も来ないな・・・」
「ええ、やはり全滅しているのではないでしょうか。マスター」
どうやら、ミヨも、いや、他の兵士たちも暇を持て余しているようだ。そして、洞窟内の気温もある程度下がってきたように感じられたので、グリーンスライムを地上フロアに偵察に出してみた。勿論、ある程度偵察出来たら戻ってこいと命令してある。
果たして、グリーンスライムは普通に戻ってきた。つまり、地上フロアはグリーンスライムが活動できる程度には温度が下がっているということであり、かつ、地上フロアには敵影がないということを意味する。
「よし、グリーンスライムを全員突入させる。」
俺は生産した60体のグリーンスライムを一斉に洞窟内に突入させた。
うねうねとグリーンスライムが洞窟内に向かっていく。グリーンスライムにはゴブリンが生きていようと死んでいようと、すべて溶かして食らいつくせ!と命令してある。あと、ついでに不衛生なものもすべて食らいつ癖と命令してある。
「こういう任務はグリーンスライムが適任ですね・・・マスター」
「ああ、ちょっと俺にはあの洞窟に立ち入るとか無理だわ・・・俺の前世で見た映画を思い出すわ・・・」
「映画・・・ですか?」
「ああ、そっか、映画を知らなかったんだよな?こんなやつだよ」
といって、インターネットスキルでバイキン・ハザードの映画をミヨに見せてやった。
ストーリーは所謂ゾンビもので、地下に作られたゾンビ蠢く研究施設に主人公たちが入っていくというもの。
まぁ、この映画のように今回はゴブリンがゾンビになるなんて話はないだろうが、熱と酸欠で死体だらけ・・・と思われるゴブリンのアジトに足を踏み入れたいとはとても思えないし、仮に生きていたとして襲ってこられるのも勘弁願いたい。
さて、バイキン・ハザードを黙々と真剣に鑑賞していたミヨはというと
「こっ、これは!・・・面白いですねっ!マスター!」
どうも映画が気に入ったようだ。そのうちカイト領で上映会でもするかな。
洞窟の中ではどうなっていたかというと、グリーンスライムはひたすらゴブリンの死体を喰らいつくしていた。いや、ゴブリンだけではない。人間の兵士も混じっている。だが、グリーンスライムはお構いなしに体に取り込み、溶かし、そして喰らっていく。
そして、どんどん巨大化しては分裂し、巨大化しては分裂する・・・ということをひたすら繰り返していく。なんせ、約1500人ものゴブリンの死体があるのだ。グリーンスライム1体当たりのノルマはなんと25人・・・
ちなみに、グリーンスライムの大きさ・・・というより体積は0.05立法メートル程度。人間でいうと、体重約50kgの人と同じ程度だ。つまり、自分の体とほぼ同じくらいのサイズの獲物を25体も食べなければならない。人間なら絶対に不可能だし、グリーンスライムが巨大化・分裂ということができなければグリーンスライムだって無理だろう。
そして当然ゴブリンをやっとすべて包めるかどうかという体積でしかないので、消化も早くはならない。だが、すさまじいスピードで巨大化・分裂を繰り返すことで進行速度も二次関数的に上がっていった。
グリーンスライムたちは貪欲に洞窟内のものを喰らいつくした。
死体は勿論のこと、ゴブリンの排泄物、服、道具、わずかな食料、何もかもだ。彼らの通った後には何も残らない。そして、グリーンスライムが洞窟に侵入して1日たったあと、グリーンスライム達は元の出口まで戻ってきた。その数なんと1600匹・・・
「・・・いやぁ、えーっと、こういうの「子だくさん」と呼んでいいのかな?・・・あは、あはは・・・」
流石のカイトもグリーンスライムのあまりの数の多さに掛ける言葉が浮かばなかった。そして、ここにカイト領で最大規模の魔獣の軍勢が誕生したのだった。




