主人公、この世の仕組みを理解する
というわけで、小一時間ほどいろいろと質問して問い詰めて集めた情報から整理するとこんな感じだ。
・この世界には俺も含め異世界からの転生者がなんと1万人近くいる。
異世界とは地球だけでなく、それ以外の星からも転生されてきているそうだ。
一体、地球のように生命が住める星がいくつあるのか?と疑問に思ってしまった。
・転生者には町を作る能力が与えられている。
町は地上、地下、水上、水中、上空の5か所に作ることが可能。
ただし、水上、水中、上空に作るためには特殊な宝玉が必要とのことで、初めからは作れないらしい。というか、水中に作る奴はまず人間じゃあないな。うん、そんなやつとは友達になれなさそうだ。
・転生者は作り出した町の支配者(ガバナーと呼ぶらしい)として町の統治を行い、町周辺の土地を開発していく。
これがどうやら”神殿”と呼ばれる連中の目的の一つ。この俺たちが今いる土地は”神殿”の信仰が行き届いていない土地ということで、この土地に”神殿”の信仰を行き届かせるのが俺のようなガバナーの使命なのだそうだ。
・ガバナー同士は戦争してもいいし、同盟を結んで互いに協力し合うってもいいらしい。
ただ、町を大きくするためには町のレベルを上げなければならず、そのための条件として他のガバナーを倒す必要があるとのこと。そうすることで優れた都市をより大きく発展させ、永く繁栄する都市ができるのだそうだ。(というのは建前で、実際のところガバナー同士の駆け引きを”神殿”の奴らは楽しんでいるのだそうだ。この女の口の軽さは病的だとわかった)
・ガバナーには前世の身体機能や経験・知識をもとにステータスが割り振られる。
こんな感じらしい。
Lv:Levelレベル。特定の条件を達成するとレベルが上がる。
HP:Hit Point体力値。このステータスがゼロになると死ぬ。
MP:Magic Point魔力値。魔法を使用するために必要。ゼロになると魔法が使えない。
AP:Ability Pointアビリティーポイント。ガバナー固有のスキルを使用するために必要なポイント。
<初期値ステータス>
項目初期値初期値ボーナス
Lv1ボーナスなし。ガバナーは全員レベル1からスタートする。
HP100 : 100 + 生前のHPの50 %
MP100 : 100 + 生前のMPの50 %
AP100 : 100 (ボーナス無し)
それで、気になる俺のステータスだが・・・
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朝霧カイト
Lv:1
HP:150(日本人だったころ、HPは100だったらしい)
MP:100(日本人だったころ、MPはゼロだったらしい。まぁ、魔法使ったことないし)
AP:100
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なんと、泣いて喜べ、最下位クラスのステータスなのだそうだ。
なんでも、この世界に転生されてきた奴は、やれ元魔王だったり元勇者だったり、はたまた英雄、高名な魔法使い、悪名高い魔族……etc
ということで、元々のHPやMPが1万超えてるやつも珍しくないとか。
何故俺を転生したのか?と問い詰めたくなるレベル。
・そして、見て分かる通りこの世界には魔法というものが存在する。魔法はこんな感じ。
★属性魔法
エレメントを用いた魔法。シンプルであるがゆえに汎用性が高く、この世界では一般的な魔法。
種類:火、水、土、風、光、闇の6属性。
★無系統魔法
属性魔法に次いでこの世界で使用者が多いが、物理法則、時空を扱える魔導士はレア。
種類:物理法則、時空、強化、回復、生命、状態異常
★精神魔法
精神を持つ生物に対し、その精神に作用することで魔法効果を発動させるもの。この世界で使用できるのはごくわずかである。ただ、魔法の特性として陰湿な要素を持つため、魔法が使えるものは迫害を受けることもしばしば。従って、魔法を使えることを隠している場合も多い。
種類:幻覚、操作、契約、状態異常
★魂魄魔法
生物の魂魄に作用することで魔法効果を発動させる。魂魄に作用させること自体かなりハードルが高く、魔法を成功させるためには相応の準備が必要。ただし、一度成功してしまうと魔法効果から抜け出すことは困難である。精神魔法と同様、魔法の特性上陰湿な要素を持つため、使えるものはごく少数かつ使用できることを秘匿しているケースが多い。
種類:呪、魂操作、死霊、契約
★創造魔法
物質を生み出す、または物質を変容させる、または物質に魔法効果を付与するといった、物質に対して作用させる魔法。武器や防具の製造および、ゴーレムやホムンクルスの生成に深くかかわる。
種類:錬金、付与
★魔神魔法
魔族および神族との契約を行う。契約を交わした魔族および神族は契約の範囲内で契約者に従う。勿論、対価が必要であり、場合によって術者の身を亡ぼすこともある。
種類:魔族契約、神族契約
かなり種類が豊富なのが分かる。
そして、なんと喜べ。
俺が現時点で使える魔法はゼロだという。
魔法が使いたければ、”神殿”の奴らが住まうという神殿都市に来て魔法を習得しろとのことだ。うん、そのうち行こう……覚えないと他のガバナーにマジ瞬殺されそう。
「まぁ、最低限、本当に最低限のことは聞けた気がする。 で、どうやって町を作るんだ?」
「理解いただいて嬉しいです! もう早速作っちゃいます? 立地は大事ですよ?」
「いや、まぁ、立地が大事というのはよくわかるんだけど、この辺一帯の地図でも持っているの? 持ってなくて当てもなく理想の地を探しさまようことになるぞ?」
チルチルミチルの青い鳥とか勘弁してほしい。
だいたい、今日の食料だってない状態なのだ。しかもこの一帯は森が生い茂るジャングルだ。見通しは悪いうえに元来た道を戻れる保証もない。しかもよく考えてみれば、ここには目の前に川がある。そこそこ大きい川だから、魚を取ったり、農業用水にしたり、下水道に使ったりと用途は多いはずだ。飲み水としても、そのままでは無理だが、沸かせば飲めなくはない・・・はず。
「はぁ、じゃあここに建設しますか! ではキャッスルコアを起動します!」
「おい待て」
「ふぁびょっ? って、うぇぇぇ? いきなりなんですか!?」
「キャッスルコアってなんだよ? 今までの説明になかったぞ?」
あ……てへっ って顔してるんじゃないよ、まったく。
「キャッスルコアというのは、これから作る町の中心です。 コアが破壊されると”神殿”の管理する町としての機能は失われてしまいます。 コアはレベル向上とともに大きくなり、コアが都市として認識できる土地の広さも変わっていきます。 また、シールドや霧隠れといった神殿都市で売られている都市専用アイテムもコアが都市と認識する土地までしかカバーできません。」
「おお、かなり重要な話じゃないか……聞いてよかった。 ちなみに、今のコアのレベルだと、どの程度の広さが都市として認識されるんだ?」
「はい!およそ0.5㎢ですね!」
ちなみに、0.5㎢というのは東京ディズニーランドと同じくらいの面積である。今の状況は東京ディズニーランドに俺一人ぽつんといるということか。
うん、寂しすぎて死んじゃいそうだ。
そして、その程度の面積なのであれば川からはもう少し離れたほうがいいと考えた。というのも、川の面積が結構あるので、かなりの面積を無駄にしてしまう。川の水は欲しいが町の面積としてはカウントしたくないという話だ。
「よし、じゃあもうちょっと川から離れたところに移動するぞ。 えっと・・・そいういえば君の名前は?」
「ああ、そういえばまだ自己紹介が終わってませんでしたね! 私の名前はシーラと申します。 ”神殿”から派遣されたカイト様専属のガイドでございます!」
「長い付き合いになるのかどうか知らんが、とりあえずよろしく。 俺は朝霧カイトだ。」
「長い付き合いになるかどうか知らん……だなんて、ひどいぃ……」
「じゃあ、俺が死なないようにしっかりとサポート頼む。」
「あ、私あくまでガイドですので、ガバナー同士の戦争とかはノータッチなのです。 えへ。」
えへ、じゃあねーよ。
というわけで、俺たちは川から離れた場所に移動した。周りはもちろんジャングルだ。これ、夜になったらどうするんだろ……まっくらじゃないかなと。
「じゃあ、このあたりでいいか。 始めてくれ。」
「はい!では行きますね♪キャッスルコアよ。 この地に根を張りなさい!」
すると、シーラが持っていた宝玉が光を放ち、さらに木の根が出てきて地面に突き刺さった。宝玉はそのまま木の根に支えられる格好で宙に浮いている。何とも不思議な光景だった。
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