主人公、経験値を稼ぐ
あれから10日間ほど経った。
まぁ、おかげ様で無事ワイルドボアを飼育するための広大な牧場が完成した。東京ドーム4面ほどの大きさの牧場で、区画は4つに分けている。牧場はぐるりと木でできた柵で囲まれている。
木でできた柵なんてワイルドボアじゃあ簡単に突き破られないか?と心配する声もあるが、そうはならない。
というのも、俺がモンスターコアで作り出した魔獣は俺の配下として認識され、魔獣からすれば俺は創造主なのだそうだ・・・なに、その魔王設定・・・
じゃあ、その柵は何のためのものか?といえば、魔獣が自由に出歩き、糞尿の類を俺たちの生活する周辺にまき散らされないために生活エリアを人と魔獣で分けるためのものだ。
魔獣に限らず、糞尿というのは様々な菌やウィルスを含んでいるから、そんなものが俺たちの生活エリアに溢れていては疫病などの病気にかかる可能性がある。当然、この世界には地球のような医薬品は無いので、疫病なんて流行しようものならたちまちカイト領は壊滅だ。
とまぁ、そんなこんなで頑張って作った牧場の風景を俺とデューク、そしてミヨが眺めている。
「なんだかなぁ・・・」
「ええ、本当に「なんだかなぁ・・・」ですなぁ」
「お恥ずかしながら、私も「なんだかなぁ」です。マスター。」
牧場には俺の魔力で作られたワイルドボア20頭が平和そうにのんびりと寝転んでいるわけだが、モンスターコアのことをもっと早く知っていれば食料問題はもうちょっと楽に解決できたのではないかと思うわけだ。だから「なんだかなぁ・・・」なわけで。
しかも、魔獣の成長は普通の獣に比べて格段に速いという話だ。例えば、猪が成体になるまでおよそ4年から5年の歳月がかかるのに対し、ワイルドボアは成体になるまでに1年もかからないらしい。なんでも、魔力を体に蓄積するせいか、体の成長スピードも早いらしい。
どんな成長スピードだよ!?っと言いたいところだが、それがファンタジーなのだろう。
しかも、である。
「確か、あいつ1頭から400kgほど肉が取れるんだよなぁ。」
そう、取れる肉の量が半端ない。それこそ猪なんて無視していいレベル。
さらに、、
「ああ、しかもうまいですぜ?」
「私もおいしくいただきました。マスター」
旨いのだ。
1頭でカイト領全員の1日の蛋白質を賄えてしまう。いや、むしろおつりがくる。そして旨い。
つまり、俺のMP10ptで領民全員の蛋白質を美味しく満たせるわけだ。勿論、ずっと俺のMPで生み出し続けるわけにもいかない。今はまだ量産体制が整っていないから当面は俺がその日分のワイルドボアを作らないといけないが、いずれその必要はなくなるだろう。
そのうえ、なんと俺が生み出した魔獣を殺しても経験値が入るという。勿論、一日1頭のワイルドボアでは碌な経験値稼ぎにならないだろうけど、これはでかい。
そういうわけで、探索隊は数を減らして町の建設にリソースを割り振った。
逆に探索隊の役割は魔獣の探索と狩猟、それに野生のバナナやヤシといった植物の採取に絞った。もう猪を追い回す必要はない。
ちなみに、10日たったカイト領の人口は以下の通り。
<カイト領の人口(26日目)>
王:1名(♂)
ガイド?:1名(♀)
従者:1名(♀)
ドワーフ:32名(♂:16 ♀:16)
エルフ:30名(♀)
ハーピー:10名(♀)
人間:340名(♂:170 ♀:170)
犬族:22(♂:11 ♀:11)
兎族:40(♀)
猫族:25(♀)
ウッドゴーレム:5体
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合計:503名(男:198 女:304 不明:5)
あれ、計算が合わない。まぁいっか・・・大体こんな感じだ。
ついに500人を超えた。
食料事情も徐々に解決し始めてきた俺の次の目標は衣食住の”衣”つまり衣類の作成だ。
実はこれもある程度めぼしはついていた。バナナの繊維を活用することだ。
バナナの繊維・・・それはバナナの茎に含まれる繊維である。
ただ、ネット情報によれば、ここから繊維を取り出すのが結構重労働で、繊維以外の不純物をへらなどで取り除いていき、1kgほどの茎から取れる繊維はわずか20gほど・・・しかもその20gの繊維をとるのに1時間はかかるとのことだ。だが、バナナの茎以外に繊維が取れるものが周りにないから仕方ない。
繊維をとったらそこでおしまいなわけではない。そのあとは繊維を紡績で糸にして、さらに布にする工程がある。そしてその布を切った縫ったして、ようやく服が出来上がるのである。
というわけで、それを実施するためには人手がいるのだ。勿論、バティスタたちにお願いして効率を上げるための道具を考えてもらっている。紡績の道具も必要だし、布を作るための機織り道具も必要だ。
「カイト様、お呼びでしょうか?」
俺の目の前に現れたのは兎族のリーダーであるヌイだ。
ウサ耳にスレンダーな体、それに青い髪。それが兎族たちの特徴だった。勿論、美人である。美人さで言えばエルフにも引けを取らない。
「ああ、よく来てくれたな。今日は仕事を任せたくて呼んだのだ。」
「ええ、そうだろうと思っておりました。そしてその仕事の内容も凡そわかっております。」
この子は察しがいい。頭がよく回るいい子だ。
「世継ぎが欲しいのですよね。そしてついに私に白羽の矢が立ったと!」
この子は察しがいい・・・
と思っていた俺が間違っていたようである。
ヌイは目を輝かせ、さぁ、いつでも大丈夫です!的なアピールをしてくるのだが・・・
「うん、外れだ」
うん、ちゃんと説明しよう。
「嘘ですね。カイト様、私達兎族の特徴をご存知でしょう?私たちは気配に敏感です。音に対しては最も敏感ですが、相手の仕草、視線、そういうものに対しても敏感です。」
俺は少し冷や汗をかいた。
「ほ・・・ほぅ?それで、どうして嘘だと思ったのだ?」
「だって、カイト様、私の顔と胸ばかり見てましたよね?兎族じゃなくても気づくぐらいまじまじと。」
ぐはぁ・・・
「・・・」
「沈黙は肯定と受け取りますが?」
なおも追い詰めてくるヌイ。はて、こんな子だっただろうか・・・
「まっ、まぁ・・・お前に見とれていたのは事実だ。「じゃあ♪」ええい、話を聞け。」
ヌイはちょっとしゅんとした。
「まず最初にお願いしたいのはバナナの茎から繊維をとり、さらには糸にして布にして、最終的に服を作る。この一連の作業監督をヌイ、お前に任せようと思う。お前たち兎族はファッションセンスにも優れているしな。勿論、兎族だけでやれとは言わん。必要な人員はビシスやデューク、それにバティスタとも相談して決めていい。」
「わかりました。早速その「まず最初に」の任務を引き受けたいと思います。そして第二の任務も大至急遂行したいと考えておりますが。」
「・・・それはまた考えておく。」
「はい!」
ふぅ・・・
ウキウキしてヌイが立ち去ってから俺はどっと疲れが出てきた。
しかし、確かにこの世界に来てからというもの1度もそういうことはしてないな、と気づく。
おかげで寝ているうちにやらかしてしまい、夜な夜なパンツを川で洗濯することになり、ミヨにお願いして乾かしてもらう羽目になったこともある。あれは最悪だった。
「おっしゃっていただければ私がお相手しますのに、マスター。」
と、その時ミヨに声を掛けられたが、ここで手を出しては歯止めがかからなくなる!と思い現在に至る。
ん?
そもそも、我慢する必要あるのか?勿論そういう行為に耽溺してしまうのはまずいだろうが、適度であればいいのかな?
ああ、いかんいかん。
まだカイト領は始まったばかりだ。まだまだ油断ならない状況だぞ俺!と自分に言い聞かせる。
だがしかしなぁ・・・
この村には魅力的な女性が多すぎる。
「マスター、ここにいらっしゃいましたか」
ミヨに、シーラ、ビシスをはじめとしたエルフたち、それに兎族、人間の女の子たちも捨てがたい・・・
いや、名前が挙がらなかった種族の女性たちも十分魅力的である。これもファンタジー世界だからなのだろうか。
「マスター?」
特に、ミヨなんて俺が好きだったアイドルにそっくりだからな。いや、本人以上に美人だったりする。ぶっちゃけ、ミヨと話すときは少し緊張してしまう。
「聞こえてますか?マスター?」
そんなわけで、ミヨとああいうことやこういうことをしたいなんて思わない日はない。
「あー、ミヨとエッチなことしたいなぁ・・・」
「えっ?・・・」
あ、あれ?
何故か目の前にミヨがいる。そして、なぜか目に涙が・・・あれれ?
「嬉しいです。マスター」
「ふぇ?」
もしかして聞かれていたのだろうか?恐る恐るミヨに尋ねてみた。
「もしかして、今の聞いてた?」
ミヨはこくんこくんと頷く。目には涙があふれ、それでいて熱いまなざしをこちらに向けてくる。
月明かりが入ってくるこの部屋で、ミヨの美しい顔がよくわかる。月の淡い光に照らされたミヨの顔は美しかった。
ドクン、ドクン
自分の心臓が高鳴るのが分かる。俺たちの距離はもう手を伸ばせば届くほどの距離。あと一つ何かがあれば、きっとその距離を超えてしまうだろう。
「ミヨ・・・その・・・いいかな?」
「はい、マスター、ずっとずっと待っていました。」
そうして、俺たちは重なり合い、求め合った。




