主人公、異世界に転生する。
日本の年間の死亡者数をご存じだろうか?
その数なんと約130万人に上る。ちなみに、日本の人口は1億2500万人くらいだから、なんと100人に1人は死んでいる計算になる。そう考えると死というものは割とありふれたもののように感じるのは気のせいだろうか。
かくいう俺も今先ほど死んだばかりだ。
年齢25歳にして死亡とは、平均寿命が80歳を超える日本に住まうものとしてはいささか早すぎないかと思うが、残念ながら事実だ。
死因はどうでもいい。
いや、殺意を持って殺されたのなら気になるところだが、そうではない。単なる交通事故だ。だが、どうでもいい。
「それより、ここはどこだ?」
そう、交通事故で死んだはずの俺は生きていた。
しかも、目の前には川。そして周りはうっそうと茂る森。いや、日本人の俺になじみのある森じゃあない。熱帯雨林のような、そう、ジャングルのような森。
「やっと目覚められましたか」
背後から声がした。
振り返ってみれば、そこには一人の女性が立っていた。白いローブを纏った若い女性。フードから水色の奇麗な紙が見え隠れする。
「えっと、あなたはどちら様で? そしてここは一体どこ?」
この女性は何かを知っているようだ。だから 「やっと目覚めた」 といったのだ。そう思った俺は質問せざるを得ない。
それにしても不思議な女だ。こんな周りには何もないジャングルのような場所で、ローブ姿?普通に考えたらありえない。
「ああ、自己紹介がまだでしたね。 私は”神殿”の使いであるシーラです。 ここは、パジャの大森林と呼ばれる森です。」
「・・・それだけ?」
いやいや、まぁ、最低限のことは聞けたけど、全然理解がいつかない。
むしろ余計わからないことが増えた。
”神殿”の使い、の”神殿”ってなんだよ?
それでもって、なんで俺はそのパジャの大森林とやらにいるんだよ?
と突っ込みたくてしょうがない。
だが、多くのことを一度に聞いても開いても困るだろうと思い、一つ一つ質問することにした。
「じゃあ、まず俺は死んだはずなんだけど、どうして生きているんだ?」
よし、まずはこの質問から始めよう。
「ああ、あなたはこの世界に転生したのです!やったねっ!」
うん、こいつはバカ認定しよう。 やったね! って……それを決めるのは俺だろうに。
「あ、うん、えっと、要するに異世界転生ってやつなんだな?」
「はい、そうです!」
「誰が俺をこの世界に転生させたんだ?」
「えへん! それこそが我々”神殿”なのです! すごいでしょ?」
「……えっと、目的は? 何で俺を生き返らせた?」
「あれぇ? えーと、えーと? ああ、あのですね! あなたには町を作ってもらって、そこの王様になってもらいます!」
「……今すぐ俺を元通り死なせてくれ」
ここまで会話が成り立たない奴がいるとは思わなかった。ある種天才……いや、天然か。
彼女を見ると、目をうるうるさせて今にも泣きそうなので、とりあえず話を最後まで聞くことにした。そう、辛抱強く。
「はぁ……で、あなたは俺に何をさせたいんだ? 町を作ってって言われても俺は建物なんて建てたことないぞ?」
何といっても、俺は元々インターネットショッピングの昇天という会社の会社員だった。建設会社や大工だったらともかく、俺に街づくりなんて無理な話だ。ん? そいういえば、こいつ、俺に王様になってほしいって言ったのか?
「ああ、王様ってことは、俺が直接何か作らなくてもいいってこと?」
「あ、はい! その辺は配下に任せちゃえばいいと思うんです。 勿論、あなた自身が作られても問題ありませんが。」
いやいや、無理だって。
「で、町作って、それで終わり? そしたらまたあの世に行くの?」
「いえ、町を作って兵士を養って、それでほかの王様とドンパチやるんです! あぁ、燃えてきますねぇ~!」
うん、こいつとは会話が合わない。
読者の皆様もうんざりするだろうから、かいつまんで説明することにしよう……
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