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世界最強観察記  作者: みるの
9/12

第九章 『……』

 ⒐ 『……』


「(オレは死んだのか……?)」


 何も見えない闇の中で、オレは目を覚まし、心の中でそうつぶやいた。

 手足はまったく動かない……どころか、体中の感覚がまるでない。

「(死んでも意識って残るんだな……)」

 一度、脳の働きがリセットされたせいか、妙に冷静で気分はスッキリしている。

 だからこそ、先に起こった出来事をありのままに受け入れざるを得ない。

 

『オレは、世界最強に挑み、そして……負けた』


 悔しくないと言ったらウソになる。しかし……。

「(世界最強の男に能力まで使わせたんだ。万々歳だろ)」

 そう、どんな能力かは分からないが、最後に見た奴の姿は、アンカーを使うときのそれだった。

 つまり、オレを敵と認識してくれたってことだ。

「(もしかしたら、一歩も動かなかったんじゃなくて、動けなかったのかもしれない。オレの猛攻にスキがあったとは、思えないしな)」

 調子にのって、都合のいい事を考え、慰めるように言葉に乗せる。

「(最後の一撃だって、キチンと撃てたら勝ててたかもな。そうか、だからアイツ、焦って能力使ったのかも)」

 それまで一撃も当てられなかったのに?

「(……)」

 思い出せば出すほどに、悔しさが増してくる。

 オレに、いいところなんて一つもなかった。

 それほどまでに、オレは。

 完膚なきまでに……。

 敗北した。

 相手を一歩も動かすこともできず……朗らかな笑顔を崩すこともできず……。

「(そんなの……納得できるかー!)」

 能力を使わせたから満足だぁ? あいつは、動けなかっただけだぁ?

「(甘えてんじゃねーよ、バカが!)」

 自分の弱さを初めて認識し、怒りがフツフツと沸き上がってくる。

「(こんなんで死んで、ジョーブツできっか! 幸い意識はあるんだ。なんとかして生き返ってやる)」

 心に再び、燃えさかるような闘志が生まれる。

「(そんでもってリベンジだ! もう他人の体を乗っ取ってでも、もう一度勝負してやるぁ!)」

 活力を取り戻した心に影響されてか、身体にも力がみなぎってくる。……みなぎってくる? 身体? ってあれ? 死んだのに力がみなぎるって変じゃない? 

 でも、息はなんだか苦しいし……苦しい?

 死んでるなら苦しいなんて感じるわけないよな。

 この息苦しさは、死んでるからというよりはむしろ……。

「心のつぶやき」と「心情」の二つを、どう描こうかなと必死になりました。

両方とも本来は口に出してないものですからね。

どの技術が一番効果的に見えるのだろうと考え、結局、小声でボソボソ話す時の「( )」を採用してます。

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