第九章 『……』
⒐ 『……』
「(オレは死んだのか……?)」
何も見えない闇の中で、オレは目を覚まし、心の中でそうつぶやいた。
手足はまったく動かない……どころか、体中の感覚がまるでない。
「(死んでも意識って残るんだな……)」
一度、脳の働きがリセットされたせいか、妙に冷静で気分はスッキリしている。
だからこそ、先に起こった出来事をありのままに受け入れざるを得ない。
『オレは、世界最強に挑み、そして……負けた』
悔しくないと言ったらウソになる。しかし……。
「(世界最強の男に能力まで使わせたんだ。万々歳だろ)」
そう、どんな能力かは分からないが、最後に見た奴の姿は、アンカーを使うときのそれだった。
つまり、オレを敵と認識してくれたってことだ。
「(もしかしたら、一歩も動かなかったんじゃなくて、動けなかったのかもしれない。オレの猛攻にスキがあったとは、思えないしな)」
調子にのって、都合のいい事を考え、慰めるように言葉に乗せる。
「(最後の一撃だって、キチンと撃てたら勝ててたかもな。そうか、だからアイツ、焦って能力使ったのかも)」
それまで一撃も当てられなかったのに?
「(……)」
思い出せば出すほどに、悔しさが増してくる。
オレに、いいところなんて一つもなかった。
それほどまでに、オレは。
完膚なきまでに……。
敗北した。
相手を一歩も動かすこともできず……朗らかな笑顔を崩すこともできず……。
「(そんなの……納得できるかー!)」
能力を使わせたから満足だぁ? あいつは、動けなかっただけだぁ?
「(甘えてんじゃねーよ、バカが!)」
自分の弱さを初めて認識し、怒りがフツフツと沸き上がってくる。
「(こんなんで死んで、ジョーブツできっか! 幸い意識はあるんだ。なんとかして生き返ってやる)」
心に再び、燃えさかるような闘志が生まれる。
「(そんでもってリベンジだ! もう他人の体を乗っ取ってでも、もう一度勝負してやるぁ!)」
活力を取り戻した心に影響されてか、身体にも力がみなぎってくる。……みなぎってくる? 身体? ってあれ? 死んだのに力がみなぎるって変じゃない?
でも、息はなんだか苦しいし……苦しい?
死んでるなら苦しいなんて感じるわけないよな。
この息苦しさは、死んでるからというよりはむしろ……。
「心のつぶやき」と「心情」の二つを、どう描こうかなと必死になりました。
両方とも本来は口に出してないものですからね。
どの技術が一番効果的に見えるのだろうと考え、結局、小声でボソボソ話す時の「( )」を採用してます。




