第八章 アンカー
⒏ アンカー
『アンカー』
それは、この世界に生まれた人間すべてが持っている特殊能力である。能力の形は、個人によって異なっており、一人が持てる能力は一つだけだ。
この力は、目や鼻と同様、生まれつき体に備わる『宝石』を通して発動される。
オレの宝石は、左手の甲に付いており、形はひし形。能力発動時に、青い輝きを放つのが特徴だ。
先程オレは、このアンカーの能力を使い、ヒモルに向かって攻撃を仕掛けた。その能力の名は――
『絶対固定』
生物を除くすべてのモノを固めることができる能力だ。
例えば、投げたボールを宙に固定し留めることもできるし、炎や電気など形の定まらないものを固体にすることも可能だ。
つまりオレは、剣で空気を切り裂き、その断裂部分をアンカーで固定。それを敵に打ち飛ばす、いわゆる『かまいたち』に似た攻撃を仕掛けたわけだ。
「いかに優れたガード手段を持つ者でも、見えない刃は防げねーだ…………ろっ?」
土煙が晴れ、目の前に現れた光景に、オレは言葉を詰まらせる。
「む、無傷……だと?」
そう、オレの攻撃をまともに浴びたはずのヒモルは、変わらぬ姿でそこに座り続けており、ダメージなど一切見られない。
それどころか、奴の周りをヒラヒラ漂う蝶々達でさえ、何一つ変化することなく、そこに存在し続けている。
「一体なんで……ハッ!」
原因を探るべく目配せすると、その理由はすぐに見つかった。
ヒモルが座るすぐ目の前の地面に、横一文字の大きな傷ができていたからである。
「ちっ、外したか。ならば!」
一つの技で外したのならその数を増やせばいい。
点ではなく面での攻撃を仕掛けるために、今度は三つの横一文字、空気の断裂刃を用意する。
「くらえ!」
そうして叫ぶと同時に、オレは複数の見えない刃物を放ち、再度、奴に噛み付かせる。
が……結果は全く変わらなかった。
「あ、ありえない」
空気の刃は敵まで届かず、地面に新たな三の字を刻んだだけ。その事実に、怒りと焦りが体を蝕んでいく。
「うわああああああ!」
オレは半ばヤケクソになりながら、次々と攻撃を繰り出す。
固定スイング、固定固定固定スイング、固定固定固定固定固定スイング、固定固定固定固定固定固定スイング!
数を増やした。大きさを変えた。形を変えた。角度を変えた。思いつくままに、ありとあらゆる攻撃を打ち続けた。
だが。
しかし。
世界最強の男に届いた攻撃は、一つもなかった。
「ゼェ……ゼェ……ゼェ……」
肩が激しい上下運動を繰り返す。呼吸がうまくできないほど息は乱れ、汗は滝のように全身から流れ落ちる。
当たり前だ。アンカーの使用は無限ではない。使うには大量の『身体エネルギー』を必要とする。
こう立て続けに能力を使用するということは、一度の休みもなしに、ずっとダッシュしてるようなものだ。
次で、最後かな……。
悔いは絶対残したくない。すべてをぶつける思いで、左手に意識を集中させ、目の前の敵を見据える。
「オレは……オレは、最強になるんだよぉぉおおおお!」
己の原点を口に出し、極限まで力強く握り締めた愛刀を振りかぶる。
その瞬間。
ブツンという音と共に、オレの目の前は真っ暗闇に切り替わった。
最後にこの目に見えたのは、オレに向かって銀に輝く手のひらを振りかざす、世界最強の男の姿だった……。
まあ、王道設定です。こういう単純な設定好きなので、組み込みました。
さて、色んな漫画読みあさって、能力をパ……




