第三章 『センカ・フルシャイン』
⒊ 『センカ・フルシャイン』
「は?」
予想だにしなかった人物の登場に、思わずまぬけな声をだしてしまう。
なぜなら、オレの呼びかけに対し、扉の向こうから現れたのは――
「女……だと?」
そう、今、オレの目の前に立っているのは、一人の女性だった。
身長は、オレより頭一つ分くらい高いから一六〇くらいだろう。綺麗な栗色の髪をしていて、その長さは、肩にかかるかどうかの位置で整えられており、頭につけられたカチューシャには、蜜柑色の大きなリボンが取り付けられている。エメラルド色をした二つの目は、優しく穏やかで、闘気をみなぎらせここに立っているオレに、なんだか場違いな気持ちを抱かせる。総合的に見ると「美人」というより「可愛らしい」と言われるような、そんなタイプの人だった。
「どちらさまですか?」
呆気にとられ、ボーッと立ち尽くすオレに、女性が優しい微笑みを作りながら尋ねてくる。
ハッと我に返り、オレは毅然とした態度を作り直す。
「オ、オレの名前はオレオ・アルティロード! 世界最強を目指し『ミライクル王国』からここまで――」
「すっごーい!」
「!?」
突然、自己紹介を遮られビックリするオレに構うことなく、女性は、まるで小さな子供のように自分の好奇心をぶつけてくる。
「ミライクル王国って、ここから三日くらいかかるでしょ! それにあの森、異国の騎士団も手こずるくらい強いモンスターが出るって聞くよ! 見たところ、大したケガもしてないみたいだし……オレオ君……だっけ? 君、強いんだね!」
「――っ」
なんだこれ? こんな時なんて返せばいいんだろう? 正直なところ、オレは褒められる事に馴れていない。
世界最強を目指し、毎日のように誰かと争ってたりしたから敵も多かったし、街の人々から「頭おかしい」「イカれてる」なんて陰口を叩かれるのも日常的だった。
そんなオレに対し「すごい」「強いんだね」なんて温かい言葉をかけてくれる人がいるなんて……。
なんだか目頭が熱くなり、心がくすぐったくなる。
「くっ」
それを悟られたくなくてオレは、つい女性から目をそらしてしまう。
「はえっ?」
女性は不思議そうな顔で、こちらを見ている。
「……」
いつまでもこのままでいるわけにはいかない。褒めてくれた人に強く言うのは気が引けるが……ええい、男は度胸!
「そう。強すぎるオレは、世界最強の人物と戦うためにここに来た! 聞けばここにその猛者がいるって話じゃないか。さあ、今すぐここに連れてきてもらおう! それともアンタ……いや、あなたが、その張本人だったり……するのか、じゃなくて……するんです……かね?」
情けないことに、最後の方は弱々しくなってしまった……。だってしょうがないだろ! 自分を肯定してくれる人に強く言葉を発するコツなんて知らねーもん。
しかしながら、オレの伝えたいことはしっかり伝わったらしく、女性は優しく答えてくれる。
「ちがうよ。私はセンカ……『センカ・フルシャイン』。この家に住む普通の一般人。それで、君が探しているのは――」
そう言って、女性……いや、センカさんは、クルっと背を向けると、家の中に向かって元気な声を張り上げた。
「ヒモく~ん、お客さんだよ~!」
「ヒ、ヒモクン?」
それが世界最強の名だろうか?
なんともヘンテコな名前だな、と思いつつも、静かにその者の登場を待つ事にする。
センカさんのよく通る声が、家の中に響き渡って一分ほどたった後――
《ギシ、ギシ》
室内から、ゆっくり階段を下りてくる音が聞こえてきた。音は段々とこちらへ近づき、階段から廊下へ、廊下から玄関へと、その存在感を大きくしていく。
「(ゴクリ……)」
音が大きくなるにつれて、オレの緊張感も高まり、思わず喉を鳴らしてしまう。
「(気圧されるな、しっかりしろ!)」
自分にそう言い聞かせ、今一度、腰の剣をすぐに抜けるように柄を撫でる。
そうしてオレが心の準備を終えたその瞬間、入口の扉が「ガチャッ」と音を立て――
ついに。
世界最強の人物が。
俺の前にその姿を現した。
「読みにくいから擬音入れて」と言われたので、擬音入れてやったぜ! 伝わるか不安だぜ!
キャラの容姿、文章で説明するの難しいぜ!!




