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【女子中学生・友情バトルアクション】ホロウキーパー  作者: 来栖らいか
【第一章 冥界の鬼】
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3/9

〔2〕

 パートで家にいない母から持たされた昼食代を、クーポン券使用で割り増しすれば二人分何とかなる。

「家で食べないと怒られる」というユウコを無理やりファーストフード店に押し込んだアカリは、ハンバーガーとポテトで空腹を満たしてからの百円ソフトクリームで、幸せに浸っていた。

「そういえば、さっきの子、誰だか知ってる?」

 面談や夏休みの予定や後輩の噂に夢中になり、ユウコに話を振られるまでアカリは学校で出会った変な少女を忘れていた。

「ん~、ボクは知らないなぁ。髪短かったし、女バレか女バスの子じゃないの? あ、バスケ部のユウコが知らないならバレー部かもね」

「女バレの子なら全員知ってるよ。でも、あんな子見たことないし」

 アカリの中学校は一学年七クラスあり、各クラスは四十名から四十五名いる。

 顔も名前もわからない生徒がいても不思議はないが、妙なインパクトのある少女だから一度見れば記憶に残っているはずだ。

「気にしない方がいいよ、アカリ。どうしても気になるなら、探し出して何が言いたいのかハッキリさせる? 三年の昇降口にいたから、面談に来た生徒でしょ? 調べれば、すぐ解ると思うけど?」

「いいよ、もう。変な妄想入ってる子だとイヤだし、会うこと無いと思うし」

「そう?」

 親友を気遣い、ユウコが眉を曇らせた。

 心配してくれるユウコの気持ちは嬉しい。嬉しいけれど、アカリは今、複雑な気分だった。

 面談での、満留の言葉が頭の中で繰り返される。

『自分、何様のつもりかしらねぇ……海老塚ユウコと同じ高校? 無理に決まってるでしょう? 推薦? まあ、走るしか能が無いんだから仕方ないけど、内申点が足らないでしょう? ホント、早く走れる足があれば脳みそ必要ないなんて、今の高校がおかしいのよ。そのおかげでアンタみたいなのでも進学できるんだから、ありがたい世の中だけど。でもね、くれぐれも海老塚さんの足を引っ張らないようにしなさい! 彼女はあなたとは違うんだから……』

 学校で満留の評判は真っ二つに別れている。

『すごく良い先生』という生徒、『最悪だ』という生徒。

 以前のアカリにとっては、確かに『すごく良い先生』だった。

 部活を応援してくれて、大会で学校を休んだ分の補習をしてくれたし、疲れた顔をしていると優しく気遣う言葉を掛けてくれた。

 ところが六月の三年生引退試合後、まるで人が変わったように嫌味で意地悪で、小さなミスさえ許さない厳しい先生になったのだ。

 アカリの進学を心配しているのだと思い我慢していたが、最近は事ある毎にユウコと比較され辟易する。

「鬼か……まさか満留のことじゃないよね」

「ん? 満留がどうかした?」

 ソフトクリームの最後の一欠片を口に入れ、ユウコがぺろりと指を舐めた。

「満留ってさぁ、鬼みたいだよね。怒ると顔真っ赤だし」

 ぼんやり考え事をしている間に溶けてきたソフトクリームを、アカリはずずっと啜る。

「そっかな? 良い先生だよ。アタシ英語苦手だけど、最初の統一模試の時に満留が勉強見てくれたから助かった」

「え、ホント?」

 統一模試直前、アカリは自信のない文法を満留に教えてもらいに行った。

 しかし忙しいから後でと断られ、それっきりになったのだ。

 もしや満留に、見放された? 

「あのさ、さっき言ってたプールだけど、今日はやめよっか。やることあったの、忘れてたんだ。それに……」

『海老塚さんの足を引っ張るな』と言われた事が口から出そうになり、アカリは慌てて言葉を飲んだ。

「いいよ、じゃあまた今度ね」

 そう答えたユウコは残念な様子ではなく、むしろホッとしているようだ。

 少しだけ、面白くなかった。

 ファーストフード店を出てすぐユウコと別れ、アカリは一人で家に帰った。

 アカリの家は分譲マンション四階にある3LDKで、ごく一般的な生活をしている。

 パート勤めの母と、遠方の高校に通う兄と、会社勤めの父。

 兄は今年二年生で部活に忙しいから、夏休みは一人で過ごす時間が多くなりそうだ。

 決して裕福ではないが、高校で陸上をやりたいアカリのために両親は、私立K高校への進学を許してくれた。

「夏期講習に出れば大丈夫って言ったよね……まさか先生が嘘ついたりはしないっしょ」

 クーラーのない部屋で安物の扇風機をガンガンかけながら私服に着替えたアカリは、ベッドに寝転がった。

 ちっとも涼しくはならないが、私立高校入学金のため母がパートに出ていると思うと、クーラーのある部屋で一人だけ涼んでいるのが悪い気がするのだ。

 気休めに参考書を開いてみたが、目が字面を追うだけで頭に入らなかった。

 こんな時は、走って気分転換するしかない。

 アカリはGパンをランニングパンツに履き替え、お気に入りのナイキ・キャップをかぶる。

 そして腰にミネラルウォーターと携帯を入れたポーチを括り付け、まだサウナのように暑い外へと駆けだした。

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