分からない
目は死んだ魚の様
これが私の奴隷として初めてのご主人様
無愛想
でも、私のことを気にしている
やさしい?
そんな訳がない!
私の村は人族に滅ぼされた、新しい魔法の実験と言っていた
私たちは何もしていないのに、私たちの明日は一筋の光と共に消えた。
きっとこの人だって、一緒だろう。
奴隷商から出て、しばらく歩きながら会話をした後定食屋に入った。
名前で呼べと言われるとは・・・だめ!これもきっと偽りだまされない。
「さて、リーナ何が食べたい?」
「食事をいただけるのですか!?」
「あたりまえじゃないか!」
なんだろう?この人なら・・・・
「いいから、早く席に座って選べ」
「しかし、・・」
「命令だ」
「分かりました。会いがとうございます」
そして、ご飯を待ちながらステータスを見せ合いこれからについて話し合った。
想像以上にリュータのステータスは低かった。
そういうことか。どうせ、肉壁として使われるのだろう。
奴隷商で様々な奴隷の扱われ方について教えられてきた。
その中に、貴族の息子などが道楽で冒険者をやるときに奴隷を肉壁に使うと言っていた。
奴隷を矢面に立たせて、後ろから安全に戦うのだそうだ。
そして、肉壁役の奴隷はろくに傷薬ももらえず、使えなくなれば売り飛ばされるか捨てられる。
結局この人も他の人族と何ら変わりはしないのだ。獣人族を下に見、奴隷をモノと思う。
どうせ死ぬのなら、早く死にたいな。長く苦しんでまで行きたくなどない。
人族に村を壊され、奴隷落ちして、この人に買われて、この人のために死ぬのだろう。
それが私の運命なのだろう。神様、私の何がいけなかったというのですか?
嗚呼、嗚呼、嗚呼、嗚呼、嗚呼・・・・・・・・・・・・・
「な!なぜ奴隷の分際で席についているんだ!けがわらしい獣風情が!!」
「お、おい!」
突然のことだった。食事を運んできた店員が、リュータの制止も聞かず
手に持っていたコップの水を私に頭から被せ・・・あれ?
思わず、反射的に閉じた目を開けるとリュータが頭から水を滴らせて立っていた。
「チッ!!!!!!クソが、いくぞリーナ」
「は、はい!」
リュータは店員を睨みつけると店を飛び出した。店員はリュータに睨まれると温かいものを滴らせていた。
ざまー見なさい!
違う!そうじゃない!あれ?リュータが私を庇い、怒ってくれた?
おかしな人だ。
不思議な人だ。
よくわからない、心がもやもやする。
その後は宿まで静かに歩いた。
宿の少し手前でリュータが歩みをとめた。
「その、ごめんな。俺が座れって言ったせいで・・・
それに、奴隷って丸わかりの格好だったしな・・・
本当にごめん、失念してた・・・
次からは気をつける」
「え?」
「それだけだ、宿入るぞ」
わからない。なぜ私に謝るのだろう?なぜ?
考えても考えても答えは出なかった。
その日は宿で久しぶりにぐっすりと寝ることが出来た。