幼馴染
私とリュウ君はいつだって一緒だった。
病院で同じ日に生まれた時から家も隣で、
幼稚園、小学校、中学校も一緒だった。
リュウ君はいつだって優しかった。
私が泣いていれば、慰めてくれた。私が喜べば一緒に笑ってくれた。
そんな彼を好きになるのに、理由など要らなかった。
気がつけば、彼のことを目で追っている自分がいた。
時には、喧嘩をしながらも私たちは一緒だった。彼と一緒にいられることが幸せだった。
でも、そんな幸せは長くは続かなかった。
中学2年生のある日のことだった。
私が小さいころにお父さんにお願いして飼っていた猫が死んでしまったのだ。
とても悲しかった。心が張り裂けそうだった。
こんな気持ちは、おばあちゃんを亡くしてから久しかった。
だから、私はリュウ君を頼った。リュウ君なら分かってくれると。
何故か、両親はリュウ君を今はそっとしてあげろと言われたが、
まだ、幼さの抜けていなかった私は、そんな両親の忠告など聞かずにリュウ君を頼った。
それが間違いだとも知らずに・・。
リュウ君の家に行くと、リュウ君は電気もつけずにリビングで呆けていた。
私は、彼がなぜそうしているのかも聞かずに、自分のことを話した。泣いた。
でも、彼は「また今度にしてくれ」とそう言って、何かを言おうとした。
でも、私はそれを聞かずに
「なんで!リュウ君なら一緒に悲しんでくれると思ったのに!」
彼を怒鳴りつけた。
すると、彼は私を慰めてくれた。
私は、やはり彼はめんどくさがっていたのだと思った。
その日、家に帰ると両親にリュウ君の両親が通り魔からリュウ君を守るために今日死んだと
そう告げられた。私は、頭を殴られたかのような衝撃を受けた。
次の日、いつも通りに登校してきた彼の顔を見ることはできなかった。
私は、彼を深く傷つけてしまったのだと。
私は、彼に無理をさせたのだと。
そう思うと、私は彼を避けていた。
頭の中では、謝らなくてはと思っても、彼に嫌われてしまったのではと思うと
どうしようもできなかった。
そして、そのまま2年と半年の月日が流れた。
今でも、彼とは話せていない。挨拶をするので精いっぱいだ。
いつか、いつか、そう思っていたのに、彼はどこかへ行ってしまった。
あの日、異世界に召喚されて、彼は王様にうとまれて勇者の立場を追われ
王城から追い出された。リュウ君は私のてのとどくところにいなくなってしまった。
そして、離れて分かった。
私は、本当に彼が好きなのだと。
そして、覚悟した。
私は、彼に嫌われたとしても最後に謝ろうと。
だから、強くなろうと思った。彼に会いに行けるように。
それから私は、第二王女のフィーちゃんと訓練をひたすらにした。
彼女は、腐っているこの国の王族の中で1人だけの良い人だった。
親や姉の不正をいつか必ず民のもとにさらけ出し、この国を良くしたいと願っていた。
でも、自分の力の無さに憤っていた。
だからこそ、私たちは打ち解けあった。
互いに、己の夢をかなえるための力を手に入れるために。
私がここまで頑張ってこれたのは、やっぱりリュウ君のおかげだ。
異世界に突然召喚されて、本音をさらけ出して頼れるリュウ君が王城を去ってから
フィ―ちゃんと親睦を深めるまで、私の心を支えていたのはステータス欄にある
”リュウタの加護”この7文字だった。異世界でも、リュウ君に頼り続けてしまっていると思うと
情けなくなるものの、この7文字があったから、いかに辛くても、苦しくても
加護を受けておきながら、それに甘んじるだけではだめだと思いなおし頑張れた。
そして、時は満ちた。
リュウ君が、魔物の大軍襲来の武功者として王城に招かれたのだ。
仮面で顔を隠していても、私にはわかる。幼馴染をなめないでほしいものだ。
リュウ君はあれで変装したつもりなのだろう。でも、ずっと隣で見てきた私にはわかる。
隠しきれない普段のしぐさ、仮面の隙間から滲みでる魔王並みの眼光
隣の奴隷の子にも優しくする、その時折見せる優しさ・・あの娘とはどんな関係なのかな?
私が謝る前に、リュウ君には久しぶりに正座をさせる必要がありそうだね。
でも、変わり無いようでよかった。本当に、良かった。
私は、横目でリュウ君を眺めながら、これまでお世話になったフィーちゃんに話しかけた。
「フィーちゃん、私、決闘が終わったら行くね」
「はい、もし、困ったことがあれば頼って下さい。
私もあなたを親友として頼らせていただきますから」
「でも、うまくいかなかったらまたよろしくね」
「大丈夫ですよ、凉。」
「ありがとう。フィー」
「「フフフッ」」




