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03 さあどうすんべ




『勝ったですって!?』


フレンド通信の向こうでエリナが声を張り上げる。

蟹鋼鉄の固まりを手に入れた事も言うと、それってレア素材じゃない、と驚愕の震える声が向こうから帰ってきた。

いやー死んだ甲斐があるってもんだ。

これ以降話にならなそうなのでフレンド通信を打ち切ると俺は屋台で買った串焼きを食べながら街を散策するのであった。


ところで蟹鋼鉄はどう見てもそこそこでかい鋼の固まりである。

つまりこれは鍛冶素材ってことだ。

次は鍛冶屋をやりたかった欲望がうずいて来たぞ!

で、初心者の鍛冶道具を見たら…炉がないじゃん!作れって事かよ!

しかし手製の竈でこんな鋼鉄扱える訳もない。

ということで炉がある場所…街の鍛冶屋に直行だ!


結論。

蟹鋼鉄は特殊な精錬が必要な鋼材。中に混ざってる細かい蟹の殻を魔法的に焼き尽くすか分離する必要があるとのこと。

で、うちの炉ではそんな魔法処理むりだそうで。

畜生!

こっつい鍛冶屋のオッサンに職人の忸怩たる顔をされたら引き下がるしかない。


なんとか出来ないかな…と道を歩く俺の目にとまったのは練金屋。

そうだ!錬金術在るんだから魔法的処置とか出来るはずだよな!


「できるよ。鍛冶素材にするんじゃろ?」


と、鼻の長いいかにも魔女然とした婆さんはフェフェフェと笑いながら言った。

完全に魔女である。


「ただしお題は20000Gもらうよ」


そんな金ねえよ!

蟹倒して得た金でも1000そこらだよ!


「じゃあ自分で何とかするしかないねぇ」


もっとるんだろ?練金、と婆さんはまたフェフェフェと笑いながら言う。

どうやってスキルが分かるのか分からないが、もしかしたらそんなスキルでもあるのか?

とにかく自分で出来そうなら話が早い。自力で頑張るしかなさそうだ。


「自力でやるなら500でいいよ?こりゃ練金台のレンタル代だよ」


このゲームの練金は練金台の上に魔力を注ぎ、注ぎ方で物質に変性を起こすものである。

初心者用の魔法陣を書いた布じゃなく、プロの道具を使えるなら願ったりだ。

初心者とはいえ借りてやってみる価値はある…とおもうので。俺は500Gをはらって店の奥に入った。


結論。

何も起こりません。


「フェフェフェ、失敗じゃな。力もイメージも足らんようじゃ」


モルガさんと知ったこの老婆は、後ろから俺の醜態を見て笑っている。

このゲームの練金は成功した上で失敗しない限り元の素材が無くなる事はない。それでも変性した物体が残るだけだ。

だから成功するまで頑張ればきっと行ける!

力とイメージ、つまりMP?と金属への理解を胸に、俺は挑戦を続けた。




「わしゃ向こうで休んでるよ」


モルガさんは途中で飽きて奥に行ってしまった。

何回目の挑戦だろう。だが流れる魔力でこの金属の物性が少しづつ掴めてきた。

実際、コレはただの鋼じゃない。

非常に硬いのはともかく、中に有機不純物が入った現実にはない鋼だ。

その事を理解しながら有機物の抽出に精神を注ぐ。

注ぎ続けて何度も気絶し掛けるが、死ぬことに比べたら意識を失い掛ける位なんと言うことはない。

ないったらない。

モルガさんが言うには8度立ったまま気絶してたらしいがどうってことはない。相手が引いていたとしても。

そして俺は魔力を注ぎ続ける。




「出来た!」


何度目の挑戦だろう、小さな殻の破片の山とツヤツヤと光る鋼の固まりが練金台の上に鎮座している。

起きてきたモルガさんが目を剥いていたが、そこは褒めて貰いたい所だ。


「ともあれ、コレで鍛冶屋に持って行けば剣なりなんなりが作れるはずじゃ。本当にやりよるとは思わなんだが…」


まあ俺も半ば本気で出来ると思ってなかった面があるしな…ともあれ鍛冶屋にレッツゴーだ!




「まさか本当に精製してくるとは…だが言ったようにうちの炉では魔法処理が出来ないんだ。

だから多少の成形は出来ても固まりを加工するのは無理なんだ…」


ガッデム!ちゃんと説明しろよ!

そんな悪態を内心ついてるとオッサンがこんな事を言ってくれた。


「どうだ、そんだけ根性があるんだからうちで少し鍛冶の勉強をしていかないか。どうにせよいつかその固まりを加工するには鍛冶の技術が要るからな」


やったぜありがとう!渡りに船とばかりに俺はオッサンの工房におじゃますることにしたのだ。




「じゃあまずは釘造りからだな。基本の生鉄と槌が扱えないと話にならん」


前言撤回したくなってきた。

針金を等間隔に切り、先を四角く尖らせて金床の穴に嵌め、潰して釘頭を作る作業を延々とやる。

これ徒弟の仕事じゃないの?

いや、技術を教える時点で徒弟みたいなもんなんだけど。

このオッサンの名前がガデムだという所がなおさらガッデムだ。

そんな作業を延々と繰り返す俺なのでした。



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