女性
俺たちは連行された。
『招待』ではない。
この手にぶら下がっている手錠がそれを如実に表していた。
セクション46。
いや、正確にはセクション46に到達したかどうかもわからない。
その中の砦に俺たちは連行されたのだ。
俺は仲間達と一緒に砦の尋問室にいた。
こういうときは仲間と分けるとばかり思ったがそうでもないらしい。
もしかすると、ただ単にどう扱うか迷っているだけかもしれない。
なんせ隣の区の領主が直接来るとは思わないよな。
それにしても不思議だ。
この砦は女が多い。
いや女しかいない。
なんでだろうか?
その後俺たちはかなり放置された。
もう一時間くらいになるだろうか。
俺はうとうととしてくる。
空き時間は眠っていたい。
それが俺なのだ。
近くで鉄のドアが開く音がした。
俺は構わずうとうととする。
殺気は感じない。
その程度は俺でもわかった。
「起きろ!」
椅子がガタッと揺れた。
椅子が蹴られたのだ。
俺はなるべく態度が悪そうに見えるようにゆっくりと顔を上げる。
ブーツ、それにすらりとした細い足。
女性。
軍服。
でかい!
いや身長もアレも……
ぞくぅ!
細川さんすいませんでした!!!
……大人の女性といった感じだ。
精悍で厳格な顔つき。
自分に自信を持っている顔だ。
身長180センチはあるだろう。
身長168センチの俺の中で僻み根性がかま首をもたげる。
く! 俺もあと2センチ身長が高ければ!!!
あと2センチでこの悩みから解放されるのに!!!
たった2センチの差がここまで俺の中で大きいとは!!!
きー! 悔しい!!!
俺が全力で僻んでいるのを察したのか軍服の女性はあくまで上から目線で言った。
「ほう……良い面構えだ。……だが、領主の顔ではないな」
この娘、いじめっ子の顔してるー。
ドSですよ!
「それ。私のですので」
細川がきっぱりという。
「それはすまなかったな。この男はつい虐めたくなる顔をしているものでな」
いーけないんだーいけないんだー♪
てんてーにいってやろうー♪
はい。てんてー。
「まあコイツは未熟なチンピラだしな」
クッソ! どいつもこいつも勝手なことを言いやがって。
俺にまともな領主を期待するな!!!
まだ1週間しかたってねえんだぞ!
あと、身長のことに少しでもふれたら泣くぞ! 泣くからな!!!
「ドチビだしな」
うわあああああん!!!
てんてー! 酷いよー!
俺の心が泣き叫ぶ中、女性はあくまでクールに話を続ける。
「大方、脱走兵か逃亡奴隷という所か。逃げ出したところでここも地獄だというのにな。ククク」
軍服の女性は俺たちを脱走者だと決めつけた。
まるで俺たちの話は聞かない。
昔から決めつけは嫌いだ。
俺の反抗心が顔を出した。
どいつもこいつも俺の事を型に嵌めようとしやがって!
あ、いいこと考えついた♪
俺は操縦用スーツの胸をはだけさせる。
「おいこらタカムラ! 全裸はヤメロ!」
「タカムラ! また脱ぎ芸はやめなさい!」
「ちげえよ! 煉獄の紋章見せるんだよ!」
二人のツッコミに俺はムキになって反論する。
俺が好きで全裸になってみたいに言いやがって!
失礼な!
……失礼な?
うん……少し自信がない。
もしかして俺って全裸を楽しんでいるのか?
いや……まさか……そんなはずが!
俺は自分を見失いながら上半身裸になりアレを見せる。
……けっして下半身のパオーンじゃないぞ。
「オラァ! これが領主の証拠の『煉獄』だ! さっさと見やがれ!」
軍服の女性は俺の裸をじろじろと見る。
少し確認するだけなのに興味津々に見る。
ガン見する。
すげえガン見する。
なにそのエッチな視線。
「ふむ。良い体だ」
「そうじゃねえよ!」
じろじろ見ないでー!
なんか恥ずかしくなってきたから!
「わかっている。指紋照合システムを持ってこさせよう。登録は済んでいるな? 領主様。もし嘘だったらこの場で銃殺だ」
「ああ。テメエこそ吠え面かくなよ」
登録は山岸を殺した後すぐに行った。
制服の女性が部屋に置いてあるマイクで人を呼ぶ。
すると端末を持った男性が部屋に入ってきた。
「指を乗せろ」
「へいへい」
あくまで反抗的な態度を貫きながら俺は端末に指を置く。
一瞬で認証が完了し俺の顔が端末に表示される。
「認証完了っと。これでわかっただろ?」
「ふん。領主が前に出てくるとは。セクション47の領主は責任感が欠けているようだな」
コメカミをピクピクさせながら嫌味をいう女性。
ずいぶん必死じゃないか。
うけけ!
その喧嘩買ったぜ!
「なんとでも言いやがれ。つうか、お前も大事な仕事にかこつけて俺の体をチラチラ見てんじゃねえよ!」
「な!」
女性はそんな事はしてないという顔をする。
おいおい。
全部知ってるんだぜ。
煉獄を確認した後も俺をエッチな目でガン見していたのはわかっているのだよ!
フフフ。
俺のセクシーさを世界が認めだしたな!
このむっつりスケベが!
フハハ!
吐け!
吐くんだ!
「ななななな! 貴様なにを言って……」
うへーい!
顔真っ赤!!!
ヒャッフー俺の勝ち!!!
うけけけけけ!
「この痴れ者が!!! は、恥を知れ!!!」
「元奴隷なんでそんなの知ーりーまーせーんー!」
鼻ほじほじ。
ダブル鼻ほじほじ。
いえーい!
顔真っ赤!!!
「ううううううううう!!! この……お前ら! なにを笑っているのだ!」
バンッと軍服の女性が机を叩いた。
俺以外全員がクスクス笑っていやがった。
一緒になって笑っていた吉田が笑いながら立ち上がって俺の方に来た。
フフフ。
このいじりに君も参加するかね?
フフフ。
なんなら下も脱ぐかね。
ひゃっーはっはっは!!!
俺が高笑いしていると、どうやらこの祭りに参加したい様子の吉田は笑みを崩さず俺の後ろに立つ。
そして、
「女の子イジメてんなこのおバカ!!!」
手錠をかけたままの両手で思いっきり俺の頭へ拳骨を落とした。
「んべ!」
俺の目から火花が散る。
そして次に細川が俺の後ろに立って拳骨を落とす。
「死ね!」
っちょ!
二人とも本気で拳落としやがった。
「なにすんだよー!」
「そこまでだドバカ。年下相手にみっともない」
「ん?」
今なんて言った?
年下?
目が腐ってるのか?
どう見てもこの女は俺より年上だろが!
ところが吉田は優しい声をかける。
猫なで声とも言う。
「君は中学生かな?」
ハイ?
そんなデカいのが中学生?
マジで狂ってるの?
「なんだ貴様! 貴様もバカにするのか!」
怒りながら軍服の女性が吉田に詰め寄る。
身長180センチはありそうな女性だが、吉田は身長190センチだ。
女性は完全に見上げる形になっていた。
って、今中学生ってことは否定しなかったよな。
いやいやいやいや!
ねえだろ!
「いいや。そんな気はないよ。俺は学校の先生なんだ」
にっこりと吉田が笑う。
なんだろう。
まるで先生みたいじゃないか!!!
その笑顔で女性は態度を軟化させた。
なぜだー!!!
ちょっと待て……マジで中坊なのか!




