メイ
セクション47。
その中央に山岸の館はある。
俺たちはそこに乗り込んだ。
館の中には多数の人が働いている。
彼らは俺を頭を垂れて出迎えた。
「タカムラ様、それにサイガ坊ちゃま、よくぞご無事で……」
一番偉い人なのだろう。
執事というヤツなのだろうか?
白い髪の紳士がサイガに駆け寄った。
「ああ、爺。俺は生き残った。このタカムラのおかげでな」
「タカムラ様。この爺からも御礼を申し上げます」
爺さんは泣いていた。
あ、そうか。
ここはサイガの家なのか。
「爺、メイはいるか?」
サイガは誰かを探しているらしい。
「はい。奥様は部屋においでです」
奥様?
サイガの嫁か?
俺の疑問など意に介さず、サイガはずんずんと二階に上がっていく。
「っちょ! サイガ説明しろ!!!」
ところが返事は返ってこない。
なんでこんなに必死になってるんだ?
「おい奥様って誰だよ!?」
俺がそう言った瞬間、サイガはとある部屋の前で立ち止まった。
「メイ……俺だ!」
その瞬間、部屋が開き部屋を開けたメイドが会釈する。
だから誰?
「お兄様!? お兄様なの!?」
部屋にいたのは12歳くらいの少女。
これが……サイガの妹か。
って、奥様ぁッ?!
おい、もしかして!!!
「メイ、あのゴリラに酷いことをされてないか? 大丈夫か?」
山岸の嫁だあああああああッ!
「はい。ヤマギシは私をここに軟禁しましたが……お兄様の言いつけ通り、手も触れられておりません」
「よかった……メイ、お前の新しい夫だ。ヤマギシを倒した勇者。タカムラだ」
「はい。お兄様の仰るのですから。素晴らしい方に違いありません。よろしくお願いします旦那様」
ん?
なんか今すげえ発言があったぞ!?
「なんですと?」
「ああタカムラ。紹介しよう。俺の妹のメイだ。そしてお前の嫁だ。いやー、お前さあ、あんがい女に人気あるんだよなあ。お前を女に近づけさせないようにするのは骨が折れたぜ!」
いい顔してサイガが言った。
ちょっと待てコノヤロウ。
「い、い、い、いまなんつった?!」
「なにキレてるんだよ! 吉田の旦那にも了解取ってあるぞ」
「よ、吉田あああああああああッ!!!」
「っふ。俺は言ったはずだ。リア充は敵だと。そして今、お前は俺の生涯の敵になった!」
「勝手なことを言うなあああああああッ!」
「このロリコン野郎が!!!」
「お前には言われたくないわボケェッ!」
「旦那様って面白いお方なんですね」
俺たちの醜態を見てメイが微笑んだ。
「サイガ! マジでどうにかならんのか!?」
助けを求める俺にサイガは紙を叩きつけた。
え? これは……
「お前らの解放手続きの書類だ。俺は約束通りお前を解放してやったぞ」
「あ、ああ」
「次は俺がお前の代わりに領主の仕事をやってやるという取引だ。メイと結婚しろ!」
「っちょ! おま……」
「メイと結婚さえすれば、俺は領主の義兄だ。代行をする建前がちゃんとできる。それにお前にも得な取引だ。奴隷商の株をやる。仲間を助け出すのに必要だろ?」
その瞬間、吉田の目つきが変わった。
俺も心がぐらつく。
「か、考えておく!」
「くっくっく。いいぜ! いくらでも考えろ」
クッソ!
煮ても焼いても食えないヤツだぜ!
それにしても……彼女ができたと思ったら、すぐあとに嫁ができた。
細川にどう言い訳をするのか。
それが重要だった。
たぶん俺の命は長くないだろう。
細川に殺されてしまうから。
DOGEZAか!
DOGEZAしかないのか!!!
どうすんだボケェッ!!!
俺はキャバクラ帰りのオヤジがオカンに土下座する謎が解けた気がした……
っく!
なんだこの圧倒的絶望感は!!!




