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剣戟巨人のアベンジャー ~同級生に叩き売られた剣闘奴隷がバカどもに復讐を果たしながら女子生徒を奪還する話~  作者: 藤原ゴンザレス


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煉獄

 観客の歓声。

 今度は俺を讃える歓声だった。

 ジェイソンも何かを喚いている。

 だが、不思議とそれは俺の耳に入らなかった。


 確かに山岸はゴミだが同級生だ。

 もっと自分の中で変化があると思っていた。

 俺はもう戻れないんだという感じとか。

 ハードボイルドな影がつくとか。

 戦争から帰ってきた兵士みたいにPTSD発症するとか。

 ところが、そこにいたのはいつもの自分。

 拍子抜けするくらい何もない。

 成長もしなければ心の傷も無い。

 ただただいつもの自分がいた。

 確かに俺は山岸を憎んでいた。

 だがあのゴミみたいな姿を見てどうでも良くなった。

 面白半分に殴って蹴って骨折って顔を踏んで命乞いする顔を形が変わるまで殴りたいとは思うが、殺すまでの価値はない。

 肉は食えず、燃えるゴミに出せない死体を処理せねばならず、金と責任というコストだけが無駄に大きい。

 うまく日本に帰還しても警察に捕まるかもしれない。

 『殺すこと』それそのものにメリットはなさそうな気がする。

 後味悪いだけで……いや違う……あ、そうか。

 その後味の悪さもないのか。

 初めての殺人とはとても思えない。

 小説とか漫画だったらもっと悩むよね?

 週刊連載だったら三回くらいは引っ張るよね?

 うーん不思議だ。


 だが俺が自分の意思で同級生を殺害してしまったことには変わりがない。

 それは紛れもない事実だ。

 正当化するつもりも仕方ないと言うつもりもない。

 たとえそれが、山岸が底抜けのアホで、しかも自業自得だったとしてもだ。

 日本だったら正当防衛でも連日マスコミに追いかけられるレベルだ。

 正しくても非難を受けるようなことなのだ。


 それなのに、なにも感じなかった。

 小学校の頃に金魚すくいですくってきた金魚が翌日死んだ時の方がよほど悲しかった。

 俺はその自分の変化に驚いていた。

 楽しいとか悲しいとかあってもおかしくないはずだ。

 罪悪感というのも全くない。


 もしかして、イジメをやっている方の気持ちってこうなのかもしれない。

 やられた方は未来永劫覚えているけど、やった方は次の日には忘れるもんな。

 つまり俺も……

 ようこそクズの世界へ。

 さよなら日本。


 いやいやいやいや!

 それはダメだ。

 そのまま眉一つ動かさずに人殺し出来るようになってしまうのは怖いぞ。

 俺はRPGの魔王じゃないからな。


 うーん……これは反省すべきかもしれない。


 次はなるべく殺さないようにしよう。

 今回は抵抗する余力を残したからいけなかったんだ。

 男子に会ったら全力で叩きつぶそう。

 生まれてきたことを後悔する程度にボコボコにしよう。

 心をへし折って気力を全て奪ってやろう。

 うん。そうだ。

 そうしよう。


 そして俺に起こった不思議な現象も問題だ。

 俺の身に何が起こっているのだろうか?

 俺の頭はパンク寸前だった。

 うがああああああ!

 考えなきゃならんことが多すぎる!


 俺は自分の腕を見た。

 日本語でも英語でもない。

 黒いルーン文字……いやよくわからないが、ゲームで出てくるような文様が腕に走っていた。

 まるでDQNが意味もわからずに入れた外国語のタトゥーのようだ。

 読めないから『秋葉原無双』とか意味不明な言葉を掘られちゃうヤツ。

 俺もタトゥーの意味はわからないはずだ。

 そのはずだ。

 だが……


 『煉獄』


 なぜか俺にはその文字が読めたのだ。

 煉獄……?

 地獄のことだっけ?

 よくわからん。


 うーん……それにしてもチンピラチンピラ言われていたが本当にチンピラみたいになってきたぞ。

 ようこそDQNの世界へ!

 いやねえよ!

 タトゥーとか……正直……ひく……

 それにいつもの服に合わない……

 うーんイメチェンせねばならないのか。

 いつもの全身黒づくめじゃダメなのか……

 なんだっけ。

 DQNの私服。

 二年前の情報だから古いけど確かハードLAスタイルってやつ?

 あの……やたらだらしのない格好。

 ゴキブリみたいな色のテカテカしたジャージに金のネックレス。

 金色の文字が入った汚らしいシャツとパーカー。

 フード嫌いなのに!

 深夜のあのチェーン店『DQN』で買い物してる連中のファッション。

 うわああああああああ!

 なんで俺らの全身黒ずくめはアウトでアイツらの黒はOKなのか。

 だれか論理的に説明しやがれ!!!


 ……日本ではオカンが買ってきたしま●らで全身を固めていた俺にはハードルが高い。

 服屋って妙に緊張するよな……あの圧倒的アウェー感。


 無理だ。

 無理だー!!!

 や、やめよう。

 もう服を考えるのはやめよう。

 死にたくなる。

 もういい。

 煉獄は当面隠すことにしよう!

 はい!

 この話終わり!!!


 そうだロッカールームに行こう!


 俺はいつものようにロッカールームへ足を向けたのだった。

 もう考えるの嫌になったのよ。

場面展開が多かったので細かく分けました。

夜にもう一つ投稿します。

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