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流青  作者: 晋螺
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其の四 出会い

曇天になっていた空がとうとう降りだし、刀に付いた血が流されていく。


しばらく昴は動けなかった。


人を、斬った...。


斬った感触があり、斬れた音があり、血特有の鉄の臭いがある。これほど条件が揃っていれば誰でもここが現実だと嫌でも気づく。

もちろん、昴もそうだった。


だからこそ昴は気が付かなかった。男が動いたことに...


首にヒヤリとした硬い感触とじわじわとくる痛み、雨に混じった流れる温かな液体

ようやく自分がどうなっているのか理解した。


「――おい」


え、今首切れてるの?ちょ、ちょっと待てよ...こちとらいまいちつーか全然把握できてねぇんだよ。空気読めやクソヤロー。いつの間にか雨ザーザー降ってるし、なんか寒いし、頭くらくらする。それにしても...



「おい!貴様反応しないか!」

「あ?」

首に刃物を当てられ、しかも考え事を遮られたのもあって警戒心むき出しに不機嫌な声が出た。

男の眉間に皺が寄ったがそのまま続けて話した。

「正直に申せ。わしの持っている書状が狙いか?」

「ちっ。またそれかよ...だーかーらー、そのあんたが持ってる書状?なんてこちとら興味ねーんだよ。それよりここは何処だ?何がどーなってるのか分けわかんねーっつーの!」

「...」

 八つ当たりぎみに男に言うと男は黙った。

雨がいっそう強く降っている中で昴が男を見下し、男が昴を見上げながらにらみ合っていた。


「半左。そこで何をしている」

「「!!」」


綾藺嵩(あやいがさ)を被った数人の男達が馬に乗ってこちらに近づいていた。これだけの人数がいれば逃げないと思ったのか男は、首に当てていた刀を納め、一人の男に頭を垂れた。

えっ、何?この人達...またなんか変なの増えたよ...。それよりどーしよ。シャツの血早く洗わないと落ちないってこれ。首斬りやがって...あ、違う違う。今心配すんのシャツじゃない、今の状況だよ。とりあえずこれ絶対タイムスリップだよな。住むとことかどうすればいいんだよー。あーだめだ久々に血ぃ流してるから貧血が...


昴が貧血と闘っているころ男達はというと...


「殿、前野殿から書状を預かってまいりました」

「うむ。城に戻り目を通す」

「は。ところで殿...」

「む?」

「何故このようなところに?確認として聞きますが」

「鷹狩りじゃ」

「ですよね。...殿。何度、何度鷹狩りに行かれるときは供を10人以上連れて行かれないと危のう御座いますと申し上げれば良いのですか!?いくら又左や勝三郎、五郎左が強いとは言っても敵に囲まれてしまえば勝つ見込みが無いに等しくなるのですよ!もはや、殿の御身はいつ狙われてもおかしくはないのですから宜しいですか?」

「分かった、分かった。全く半左は心配性じゃな」

「そういう問題ではありませぬ!殿にもしもの事があれば...」

「半左、その童は何だ?」

自分に説教をしていた男の言葉をさえぎり男は尋ねた。

「...はぁ。それが...突然空から降ってきて3人の内一人を倒し、その男の差していた刀を奪い、

残りの二人を片付けました。書状を狙っていないと言っておりましたが素性が明らかになっておりませぬ故まだなんとも判断しかねます。間者やもしれませぬ」

「ふん。それにしても奇妙な格好じゃの」


一方、放置されていた昴は誰が見ても異常アリな顔色をしながら踏ん張っていた。

いつまで人をほっとくんだよ。あんのヤロー当たり何所悪くてけっこうな量流れてんだけど!?ふざけんじゃねーよ。あぁーマジでやばい...虎と馬が俺の開いちゃいけない扉開いちゃうよー。アレ?雨止んできてる?音が小さくなってるよーな...アレ?まさかの地震も起きてる?...あ、れ...

そこで昴の意識はなくなった。


「おい、童。お主...」


 -バシャッ

 

意識がなくなった昴は前のめりに倒れた。


「半左」

「は」

「城に戻る。その童も連れて参れ」

「と、殿!?」

「よいな」

「...は。仰せのままに」

そう答えると昴を供の一人の馬に荷物のように乗せた。

そして、馬に乗った男はそれを見届けると自身の城に向かって馬を進めた。


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