死にたがりの令嬢と生きたがりの王子
シェリレア・ドール公爵令嬢。
この国にいてこの名前を知らない人なんていないだろう。
彼女は11歳の時に初めて表舞台に姿を見せた。俺と彼女が初めて出会ったのもこの時だ。その姿を見た者達は口を揃えて言う。まるで人形のようで、美しすぎた____と。
彼女は笑みひとつで会場にいた者達を魅了した。
その後、彼女への求婚状は大変だったと聞く。同年代からは勿論、妻をもつ者から60を超えた者まで。それは一種の戦争が始まりそうだった。家庭内の崩壊、果ては誘拐未遂まで起こった。
女からは嫉妬と羨望、男からは執着と欲を向けられたシェリレアは齢11歳で笑顔を失った。
それを知った国王はシェリレアを俺の婚約者にすると言った。
「公爵令嬢シェリレア・ドールは第一王子アスラール・ミリオネアの婚約者とする」
王の言葉は絶対だ。それも王子の婚約者ともなれば彼女に手を出す人間など居るはずもない。
かくしてシェリレア・ドールを巡った争奪戦は幕を終えた。
____表向きは____。
こうしてアスラールとシェリレアは婚約者になり、定期的に2人でお茶をするようになった。
「......もう君を傾国の令嬢とでも呼びたいね」
「......うるさい」
俺は彼女と婚約してからというもの、数々の暗殺者に命を狙われた。王子を殺そうとするなど一瞬で首が飛ぶというのに、彼らは躊躇なく俺の首を狙い続ける。
その理由はたった一つの想いによるものだった。彼らが死ぬ間際必ず言うのだ。
『シェリレア・ドールを愛している』と。
「もうこれで5回目....か」
「........死にたいわ」
「俺は生きていたいよ」
この5回目とは暗殺者が来た数のことを言っているのではなく、この状況になったのが5回目だと言っている。
そう____シェリレア・ドールとアスラール・ミリオネアは5回目のこの日を迎えたという事だ。
2人の1回目の人生はあっけなかった。
アスラールはこのお茶会の日の夜に暗殺者によって殺され、残されたシェリレアはその後数々の縁談での揉め事で戦争が起き、それに巻き込まれ死んだ。
2人は人生を終えたと思っていた。いや、確かに終えたはずだった。
目を覚ますとシェリレアはアスラールと初めてお茶をした日に戻っていた。
そしてアスラールもまた同じ日に戻っていた。
2度目の人生ではお茶会でシェリレアはアスラールが暗殺者に狙われることがわかっていたためアスラールに助言をした。その際お互いに1度目の人生の記憶を持って戻って来た事を知った。
そしてその日の夜に俺を殺しに来た暗殺者は捕まえたものの、また別の暗殺者によって数ヶ月後、俺は毒によって殺された。
シェリレアはお茶会の日にアスラールに暗殺者を送って捕まった男が既婚者だったことで彼の妻はシェリレアに自分の人生がメチャクチャになったと怒りの矛先を向けてシェリレアを刺殺した。
そして2人は2度目の人生も終わりを告げた。
それから幾度となく繰り返される惨劇はもう5度目を迎えた。
「....いつになったら死ねるのかしら」
「....いつになったら死なずに生きていけるんだろう」
2人の口から出た願望の言葉は真逆の言葉だった。
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