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episode 008
学園みらい10番地にある文化会館は、別名『プレスステーション』と呼ばれている。
建物の北端および南端の部屋が、それぞれ男子新聞部・女子新聞部の部室となっているからだ。
以前は1つの部だったのだが、ある年にお互いの方針が食い違ったため2つに分裂。
特に、昨年冬流と夏純が編集長に就任してから、新聞部の南北朝戦争は更に激化していた。
まあ実際にそう思っているのは、当人同士だけだったりするのだが……。
男子新聞部の部室から出て来た一人の男子生徒は、目の前を駆け抜けていく小柄な少女に声を掛けた。
「あ、紀原さん」
自分の名前を呼ばれ、紀原愛唯はくりんと振り返った。
彼女の胸元では、大きな一眼レフカメラが揺れている。
「あ、どもども」
「そんなに急いで、どうしたの?」
「相談室からの依頼で、例の下着泥棒の情報収集。北朝も来ているでしょ?」
「ああ、左尾キャップがヒートアップしている」
「『南朝のかすみ頭には負けるな』って?」
「そうそう」
二人は笑った。
「でも、今回私は単独行動なんだ」
そう言って、愛唯はカメラを構えた。
「本職は、写真部だからね」