episode 007
ポプラ通りを横切って、学園みらいエリアに入った春都は、左手首にはめた腕時計のランプが赤く点滅しているのに気が付いた。
側面に内蔵されているイヤホンを引き出し、耳に当てた彼は、左手首を口元に持って行く。
「はい、こちら源無……」
『室長っ、どこで何をやっているんですか!』
イヤホンの音声容量一杯に、秋希の声が響き渡った。
ジーンとなった耳を押さえて、春都が呻く。
「今日は、いきなり怒鳴られる日だなぁ」
『え、何?』
「んにゃ、こっちの話」
『とにかく、室長自らミーティングをすっぽかすなんて酷いわ。いま大変な事になっているんだから……』
そのタイミングで、春都は秋希の次の台詞を先取りした。
「女子生徒連続下着泥棒事件、だろ?」
『えっ?』
驚いて言葉を止めた彼女に対して、彼は畳み掛けていく。
「被害者は12名。共通点は、全員特進クラスの生徒である事」
『……』
「何なら、下着の色のリストも読み上げようか?」
『……馬鹿』
声色から、受信機の向こうで顔を真っ赤にしている秋希の姿が浮かんできた。
『室長、いつの間に情報を取ったの?』
「俺は元々、外回りのほうが得意なんだよ」
そう言って、春都は指を一回鳴らした。
このアクションによって、頭の中でモードを切り換える。
「では、指示を出すぞ。夏純と冬流は、それぞれ目撃者が居ないか聞き込みを開始。秋希ちゃんは、これまでのデータから次回犯行予測をシュミレートしておいてくれ」
『了解、ミッションのリミットは?』
これまで何度も繰り返している彼女からの振りに、春都はニヤッと笑いながら言った。
「親父が、未来に向かう時間だ」