episode 078
気がつくと、辺りは薄暗くなっていた。
布団から身を起こした秋希は、枕元の時計を眺める。
時刻は、午後4時を回っていた。
「夏純ちゃん、まだ帰っていないんだ」
体調を崩した彼女は、昨夜から夏純の部屋で眠っていた事を思い出した。
あれだけ寝つけなかったのが嘘の様に、昼間はずっと熟睡していたらしい。
朝食も摂っていなかった彼女は、空腹を覚えて、のろのろと立ち上がる。
その時、彼女の耳にドアをコツコツとノックする音が聞こえた。
(誰?!)
思わず身構えた彼女だったが、ここが夏純の部屋であった事を思い出して、ゆっくりとドアに近付いた。
ノブを捻り、少しだけ顔を覗かせる。
相手を見た秋希の顔が、ホッと安堵の表情に変わった。
「あら、どうしたの?」
「ただいまぁ!」
勢い良くドアを開けて、夏純が部屋に帰って来た。
「もう7時を回っているなぁ、一人にして悪かったよ。今から美味しいコンビニ夕食を……」
そう言って部屋を見回した彼女は、当然居るであろう秋希の姿が見えない事に気が付いた。
「ありゃ、アキ?」
不思議に思った彼女は、部屋の隅々まで探してみる。
しかし、人の気配は全く無かった。
「黙って帰ったのか、冷たいやつだなぁ」
少しだけ頬を膨らませた夏純は、再びドアを開け廊下に出た。
秋希の部屋は、階段を下がった2階にある。
暫く経ってから、血相を変えた夏純が飛び込んで来た。
「居ない!」
震える手を何とか押さえ付けて、通信機のスイッチをONにする。
「……もしもしアキ、どこに居るの?応答しろッツ!!」
しかし、通信機のスピーカーからは、ザーッというノイズ音しか聞こえて来なかった。




