episode 069
『……獣への移植は成功』
『……量産化に向け、ブレーンを複写』
『……術後の提供者、未だ安定せず』
殴り書きに近いメッセージの意味はよく分からないが、春都は何か途轍もなく不穏なものを感じていた。
早々に退散したほうが良さそうと判断し、秋希に声を掛けようとした。
そのとき彼は、天井の隅に立て掛けられた写真立てを見付けた。
何か引っ掛かるものを感じた彼は、崩れそうな本の階段をよじ登り、何とかそれを取り上げる。
埃で曇った表面をタオルで擦ると、中から一枚の写真が姿を覗かせた。
正面を向いて、一組の夫婦らしき男女と、その娘らしい少女が仲良く写っている。
少女は、小学生くらいだろうか。
(あれ、この娘はどこかで……)
彼女の面影から何かを思い出しそうな春都だったが、隣に居る秋希の身体がガタガタと震え出したのを見て、思考が吹き飛んでしまった。
「アキちゃん、どうした?」
「……あの男だ」
顔面蒼白となった彼女は、震える指で写真の男を指しながら話している。
「伊勢丹で会った……とても危険だわ」
「男?いったい何を……」
彼女の言葉が一向に理解出来ない春都だったが、次の瞬間周囲を包んでいる空気が変わったのに気付き、慌てて秋希を押さえ込んだ。
「静かに、誰か来る!」




