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インベンションマン|Invention-Man  作者: 黒珈|くろこ


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69/72

episode 068

「なに、一緒にお花摘みなんて嫌よ!」

「それは冗談だよ」

 真っ赤になって怒る秋希を見て、春都は笑って説明をした。

「これから、拝島教授の部屋を捜索する」


「え、それって不法侵入じゃ……」

「そうだけれど、今回は仕方がない」

 春都は力強く主張した。

「唯一に近い手掛かりだ。ここでイチから出直す時間は残されていない。既に犠牲者が2人出ているからな」


 それを聞いた秋希は、黙ってバッグから手袋を取り出し両手に装着した。


 廊下の見取り図と看板を頼りに、慣れない大学の校舎内を暫く歩いた2人は、ようやく目的の部屋……『拝島研究室』を捜し当てた。


 簡単なピッキングスキルで、春都はドアロックを解除する。

 静かにドアを開けた途端、モワッとした古い空気が外に向かって流れ出て来た。

 顔をしかめた秋希が、ポケットからハンカチを取り出し口に当てる。


 約8畳程のスペースに、分厚い書籍がぎっしり詰まった本棚が四方を取り囲んでいる。

 中央にある事務机と丸テーブルにも、書籍やレポートがこれでもかと積み重ねられていた。


 春都は秋希に目配せをして、室内の捜索を開始する。

 秋希も服の汚れを気にしながら、書棚の資料に目を通している。

 暫く作業を行った結果、拝島が研究していた『獣祠道』の資料らしきものが数点出て来た。


 春都が最も興味を引いたのが、獣祠道の儀式に関する詳細が記された書類だった。


 それによると……

 まず術者は、仮死状態にした獣とヒトの間に立ち、両者の額に手を当て、念を送りこむ。

 ヒトの血流を探り当てた術者の左手は、そのまま一気に額を突き破り、脳味噌を掴み上げる。

 同様に獣の脳をすくい上げた右手を眼前で重ね合わせて、取り替えたものを両者に戻す。


 文字だけを見れば非常にシンプルな儀式なのだが、現代医学や自然の摂理などを完全に無視した、異常な行為である事は間違いない。


 件の書類は拝島にとっても重要なものだったらしく、本文の様々な箇所にマーカーが引かれてあった。


 順を追ってページを繰っていた春都は、欄外に書き込まれている幾つかの走り書きに目が止まった。

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