episode 067
立川から駅一つ向こうの場所に、I大学の広大なキャンパスが広がっていた。
講義の無い休日であるため、クラブ活動をしている学生を除いて、学内には殆ど人が居ない。
生物学棟に到着した二人は、事務室にて拝島教授に取り次いで貰うようお願いした。
初老の事務員は、眼鏡の縁を上げながら帳簿を付けていたのだが、はあと溜息をついて言った。
「拝島さんは、暫く休校しているよ」
「休校、ですか?」
「まあ、もともとゼミの生徒も少なかったのだが、この春から一年間休むと申請があってね」
「はあ」
「全く、大学教授とはいい身分だわい……」
皮肉交じりにそう言った彼に、春都はこう尋ねた。
「あの、拝島さんは休学してどこかに行かれるとか、言われていましたか?」
「いや、研究の為とは言ってたが……そこまでは聞かなかったな」
話すことはもう無いと言わんばかりに、事務員はくるりと背中を向けてしまった。
「うーん、手掛かりゼロか……」
諦めて帰ろうと動き出した秋希を、春都は呼び止めた。
「秋希ちゃん、お花摘みに行こう!」
「え、ちょッ!」
戸惑う彼女をぐいぐい引っ張って事務室から離れた春都は、突き当たりの角を曲がった所でピタリと足を止めた。




