episode 066
2人は、伊勢丹の2階玄関まで降りて来た。
ドアを抜けて連絡通路に出た春都は、ぴたと足を止める。
「ここが、北野鍾子が飛び降りたところだね」
それを聞いた秋希は、黙ってコクンと頷く。
頭上を見上げた先にある壁面に掛かった大画面は、ちょうど明日の天気予測を映し出しているところであった。
(あの高さから、彼女は墜落したのか……)
自分の意思がそうさせたのでは、決して無かったのだろう。
人獣交換の後、彼女はどのような扱いを受けて来たのだろうか。
なんとも言えない気持ちになった彼は、視線を階下に戻して……ふと動きを止めた。
ちょうど画面の真下あたり、一階の壁面に向かって、河崎柚香が佇んでいる。
彼女は、手にしていた花束をそこに立て掛けると、静かに手を合わせた。
「あ、ユ……」
遅れて気が付いた秋希の口を押さえた春都は、黙って柚香を見守る。
数分間、黙祷を捧げていた彼女は、やがて踵を返して、駅とは反対方向へと歩き去った。
「……大丈夫だ」
何故声を掛けなかったのか?という顔をしている秋希に、春都は軽く微笑んだ。
「彼女の事は、優秀なメンバー2人に任せておこう」




