episode 065
周囲の温度が、急に数度ほど下がったような感覚になった。
「正確には、ヒトの脳7と獣の脳3を入れ換えるみたいね。それ故に獣は人並みの知能を持ち、ヒトは人形のごとく成り下がる」
「アンフェアだこと」
あさっての方向を向いて、春都は毒づいた。
「ただし、誰でも良いって訳ではないの。適合者は若い女性、それもレベルの高い脳を持っていること」
「成る程……それで特進クラスか」
少しずつだが、パズルのピースが繋がっていく。
「あと、人獣交換は提供者であるヒトの体内に一定の『血流』……血の流れがないと儀式を行うことが出来ないらしい。それで、ええっと」
秋希珍しく、顔を伏せて口ごもった。
「ん?」
「ちょっと、こっちに」
首を傾げた春都を手招きして、彼女は小声で囁く。
「……儀式は、あの日の近辺に行うんだって」
「あの日?」
一瞬理解出来なかった彼は、ややあって、ああと頷いた。
「それで、儀式を終えた人間の身体には、殆ど血が残っていなかったのか?」
「そう断定してしまうのには、まだまだ疑問点が残っているけれどね」
「よォし、大筋は理解した」
立ち上がった春都は、鞄を手に取った。
「行ってみよう、この本の作者の所へ」




