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インベンションマン|Invention-Man  作者: 黒珈|くろこ


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62/72

episode 061

「……さ、さあもう一個の方を開こうか」

「そ、そうね」

 乾いた笑いを浮かべて、二人はもう一つのウィンドウを待った。


 前が前だっただけに、あまり期待はしていなかったのだが、ファイルが開くと食い入る様に画面を見つめる。

 果たして、そこに現れたのはたった一行の文字だけであった。


『榊原燕鼠。江戸時代、獣祠道を唱えた人物』


(さかきばらえんそ? じゅうしどう?)


「これだけ?」

 あまりの情報の少なさに、秋希も拍子抜けしていた。


選択肢が少ない場合、人間は非常に慎重になる。

 しかも、今回は実質一つしか選べない。

「塩素研究会は無駄骨になりそうだし……」

 やがて、春都が口を開いた。

「賭けてみよう、榊原燕鼠に」

「うん」


 それから2日、二人は学内の各図書館(大学・高等部・中等部)に足を運び、榊原燕鼠の手掛かりが無いか求め歩いた。


 勿論春都は、ナタリーの情報網も駆使していたのだが、これといったものは見つからない。


 諦めが見えた時、中等部の図書館司書のお姉さんが声を掛けてきた。


「あなた達、獣祠道の事を調べているんだって?」

「ええ、そうですが……」

 人柄の良さそうな彼女は、春都に向かって楽しそうに話しかけた。

「昨日担当の人に、そんな話を聞いたもんだから、お役に立てるかしら」

「どんな小さな事でもいいんです、お願いします」

 頭を下げる秋希に、少し考えていたが、やがて意を決した様に話しかけた。


「実はね、大学生時代、ゼミの先生が講義の中で話していた事を思い出したの。確かそんな名前だったと思うわ」

 春都と秋希は、思わず顔を見合わせた。

 ようやく一筋の手掛かりが見えて来たのだ。


「それで、その教授は今何処に?」

 彼女は額に指を置いた。

「うーん、何せ10年も前だから。I大学の生物学部だったんだけど、まだ居るのかなぁ……」

 話している内に、記憶が蘇って来たのだろう、彼女は少し吹き出しながら言った。

「それで、その先生が獣祠道についてまとめた論文を本にしたって言ってね。家賃が払えないとか言って、学生達にも無理やり買わせようとしてたなあ。誰も買わなかったけど、大きな本屋さんではそこそこ人気があったみたいよ」


「その教授のお名前、伺ってよろしいですか?」

 最後に、秋希が聞いた。


「確か……はいじま……拝島新太(はいじまあらた)先生よ」

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