episode 049
「溶解液だと!?」
『今度は、顔に当てちゃおうかナ』
薄ら笑いを浮かべた怪物を見て、SSRは顔色を真っ青にして逃げ出した。
これを見ていた群衆は、ついにパニックを起こして逃げまどった。
その様子をからかう様に、数条の溶解液が次々に降り注ぐ。
人の身体は直接狙っていないが、街路樹や校舎の壁がそこかしこで白煙をあげて溶け始めた。
「なんだなんだ?」
そのうちの一つが、人の波に逆流してひょいっと顔を出した夏純の上に襲いかかる。
「この馬鹿っ!」
猛ダッシュをかました冬流が、彼女に飛びついて引き摺り倒す。
今まで彼女がいた地面が、ぐずぐずに崩れ落ちた。
「離せ、スケベッ!」
夏純は、自分の身体に伸し掛かっている冬流を見て、慌てて両腕で押し退けた。
「何だよ、助けてやったんじゃねえか!」
「余計なお世話、あんなの余裕で避けられたわよっ!」
「はいはい、そーですか」
まだギャースカ喚んでいる彼女を無視して、冬流は油断無く怪物の方に目を戻した。
と……その目が点になる。
怪物の背後、5メートル位の所に、2人の女子生徒がうずくまっていた。
見ると、腰が抜けてしまったのか、1人で立つ事の出来ない愛唯を、秋希が必死に助け起こそうとしている。
「愛唯!秋希!」
「叫ぶな馬鹿ッ!」
慌てて夏純の口を押さえ込む彼だったが、間に合わなかった。
背後の気配を察した怪物が、ゆっくりと振り返る。
その瞳には、残忍な光が宿っていた。




