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episode 004

 たまみらい学園は、国内最大級の敷地面積を誇る事から、構内も細かく番地区分がされている。


 東南東の外れにある『学園多摩13番地』には、新設校には相応しくない、かなり寂れたエリアが存在していた。


 予算の都合なのか、噂では建築事務所の建物をそのまま残したと言われている、鉄筋3階建の専門棟。

 その一階に『技術準備室』と書かれた部屋があった。


 アルミ製の扉の前に立った源無は、無言でドアノブを握り込む。

 程なく、脳内に先程の電子音声が聞こえてきた。


『指紋とIDヲニンショウ。源内春都ミナイハルトげーといん』

 一拍置いて、ロックの外れる音がした。

 室内に春都が入っていく。


 6畳程のスペースを囲むようにして、実験器具や工具を入れた棚がひしめき合っている。

 部屋の中程にあるスチール机には、数世代前のデスクトップパソコンが、まるで家主のように鎮座していた。


 そして、スチール机の向こう側には、恰幅のいい西郷隆盛似の男子生徒が、スナック菓子をボリボリ食べながらゴシップ誌を眺めている。

「遅いぞ、ケビン」

 グラビアアイドルの水着写真から目を離さずに、彼は口を開いた。

「悪いな旭納あさひなちょっと学園長に呼び付けられてさ」

 手近な椅子を引き寄せながら応える春都を、彼はジロッと睨み付けた。

「本部において、本名は御法度だぞ」

「ああ……えーっと、お前何て名前だっけ?」

「マイネーム、イズ、エルビス」

 そう言って、エルビスこと旭納蔵敷あさひなくらしきは、大きく胸を張った。


 冷めた目でその様子を見ていた春都は、机上のパソコンに向き直った。

「で、こいつに呼び出されたんだが……」

『コイツトハナニヨッ!』

 途端、機械の中から抗議の声があがった。

 オフになっていた画面に、制服を着た小学生位の金髪少女の画像が浮かび上がる。

 ふくれっ面をした彼女は、春都に言った。

『ワタシハ、なたりーデス』

「趣味に走っているなぁ……」

 素知らぬ顔をして雑誌を読んでいる彼女の名付け親を見ながら、春都はため息を吐いた。


 ナタリーは、人工知能(AI)である。

 彼女の思考レベルは相当高く、キチンとした自我を持ち、自ら考え、行動する事が出来る。

 そんなプログラムが、何故か世代遅れのパソコンの容量内に収まっている。


(不思議なものだな……)

 改めて、春都は思った。

 思えば、彼女との出会いも相当奇妙な出来事だったのだ。

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