episode 048
突然、怪物の瞳に緑色の光が宿った。
ちょうど春都を襲った男が倒れた瞬間だったので、おそらく何らかのデススイッチが作動したのであろう。
『あーあ、やっと自由になったナ』
怪物は、うーんと大きく伸びをして、普通に口を動かした。
「しゃ、喋ったぞ!」
周りを囲んでいた生徒達の間に、新たな動揺が走る。
しかし、彼等の期待を一身に受けている(と思っている)SSRは、中に人間が入っているものと勘違いした。
一人が、ニヤリと笑いながら近付いていく。
「おいおい、困るんだよな。こんな事をされちゃあ……」
「危ない避けろっ!」
咄嗟に冬流が叫んだが、間に合わなかった。
次の瞬間、いきなり空中に放り出された彼は、背中から校舎の壁に叩き付けられた。
ぎゃっと一声出したあと、動かなくなる。
『全治2か月、ってトコかナ』
「野郎ッ!」
「馬鹿、相手が悪いから止めろっ!」
残りの4人は、冬流の制止する声を無視して腰から警棒を取り出すと、一斉に踊りかかった。
そんな彼らの動きを目で追っていた怪物は、先ほどからモゴモゴさせていた口を開け、ペッと唾を吐いた。
それは緩やかな軌道を描いて、間近に迫った一人の警棒に当たる。
「ギャッ!」
ドロドロに溶けた警棒を放り投げるた彼は、焼けただれた右手を押さえその場でのたうち回った。




