episode 047
たまみらい学園は、その広大な敷地に散らばる生徒達の要求に応え、合計3つの「生協」を備えている。
中でも、多摩地区とみらい地区の境目に位置する『大生協』は、その名の通り一番の規模を誇っていた。
ここでは、生徒達の生活を応援する為、大型スーパー並みの商品が品揃えされている。
正面玄関に滑り込んだ春都は、一直線に食堂を抜け、購買部へと向かった。
「やべっ!」
咄嗟にかがんだ頭上を、レーザーが通過する。
食器棚にストックされていたシチュー皿が数枚、灰に変わった。
テーブルの下をくぐり抜けて通路をショートカットした彼は、渡り廊下を突っ切り別棟に入る。
正面の階段を登った先に、目的地はあった。
「いらっしゃいませ」
アルバイトの女子大生が、笑顔で彼を迎えた。
春都は、彼女と顔なじみである。
「あら、今日はどうしたの?」
息を切らして駆け込んで来た彼を不審に思った彼女は、心配そうに聞いた。
「ごめんヨウちゃん、説明している暇は無いんだ」
春都は、壁に掛かっている数々の商品には目をくれず、彼女の後ろに並んでいたモノを指差した。
「それ頂戴」
数十秒後、レイガンを構えた男が購買部へとたどり着いた。
辺りを見回しながら、慎重に階段を昇る。
「もう逃げられんぞ!」
既に建物の見取り図をチェックしていた彼は、逃げ場の無い事を強調して叫んだ。
「失敗したあ〜」
柱の陰から、悔しそうな表情を浮かべた春都が姿を現す。
レイガンの照準を合わせたまま、男は静かに口を開く。
「生かしたまま捕える予定だったが、あまりにも犠牲が多過ぎた。一思いに殺してやるから、覚悟しろ」
「……」
春都は無言でこちらを見ている。
それを覚悟と受け取った男は、グッとトリガーを引いた。
二人の間を、ひときわ大きな光条が突き抜ける。
一瞬後、一人が膝から崩れ落ちた。
「ぐっ……馬鹿なっ!」
自らの胸から焦げ臭い匂いを感じながら、男は目の前で両手を突き出している春都を、信じられないという目付きで睨んだ。
「いやぁ、最近は便利になったわ」
携帯端末からモバイル充電器のケーブルを引き抜いた春都は、意識を失って倒れた男の手からレイガンを蹴り落とした。
レジの隅で口をパクパク開けてへたり込んでいる店員に千円札を渡して、ニッコリと笑う。
「ごめん、これ領収書もらえるかな?」




