表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インベンションマン|Invention-Man  作者: 黒珈|くろこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/55

episode 044

「どけどけどけい!」

 既に集まっていた野次馬の山を押し退けて、冬流が最前列に顔を出した。


「何だぁ、こいつは?」

 5号館の正面玄関前に、直径10メートル近くの大きなクレーターが出来ている。

 その中央に、鉛色をした大きな球体が顔を覗かせていた。

「直径3〜4メーター、ってトコか」

 目視でざっと計算した彼は、その流れで頭上を見上げた。

「隕石って訳じゃあなさそうだし、戦闘機の落とし物か?」

 集まった生徒達も、得体の知れない物体に手を出す事が出来ず、ただ距離を取って見守るしか出来ない様子だった。


 その時、ふた筋向こうの道路では、壮絶なバトルが繰り広げられていた。

 地を飛ぶ様に駆け抜けている春都に向かって、数条のビームが矢の様に降り注いでいる。

 やや時間を開けて、白衣の男達が小走りに歩を進めていく。

 男達はそれぞれ、2丁のレイガンを構えていた。

 かなりの手練らしく、付近の建物には全くヒットしていない。

 彼らは春都のバリアーにビームを確実にヒットさせて、その効力をじわじわと奪っていった。

「ちいっ!」

『エアーラン』に急制動を掛けて身体を止めた春都は、後ろを振り返りざま両手を前に突き出した。

 身体全体に展開していたバリヤーが直径1メートルの鏡に変化する。

 丁度レイガンを発射したばかりの3人は、跳ね返された自らのレーザーに胸を貫かれ、もんどりうって倒れた。


「……バリアーには、こういう使い方もあるんだぜ」

「その様だな、意外だったよ」

 唯一無傷だったリーダーの男が、レイガンを構えながら言った。

「だが、今の防御でとうとうエネルギーが切れたようだな」

「さて、何のことだか」

 春都は無言のまま、左腕に巻いた通信機をチラリと見た。

 ディスプレイには、電池交換のサインが出ている。

「こういう事さ!」

 一瞬後、春都は予備動作抜きで前方にダイビングした。

 頭上をかすめたビームを紙一重で躱わしつつ、横道に飛び込んでいく。

「外したかっ!」

 予想外の動きに虚をつかれ出遅れた男は、舌打ちをして後を追った。


 このまま闇雲に逃げ回る訳にはいかないと察した春都は、緊急モードでナタリーを呼び出した。

『ン、ドシタノ?』

 あまりにも呑気な彼女の声に気が抜けそうになったが、足元近くを次々と着弾しているレーザーがそれを許さない。

「通信機の電池切れだ。バリヤーが使えない」

『アラマア』

 ナタリーの口調は、あくまで他人事だ。

 それで却って肝が据わった春都は、彼女に尋ねた。

「援護が欲しい、蔵敷……エルビスはいるか?」

『イナイヨー』

 ナタリーは当然のように答えた。

『4ジカラ接待ダッテ早引キシテイッタモン』

「正義の味方の自覚ゼロだな……」

 こめかみを押さえた春都は、溜息をついた。

「仕方ない、一旦そちらに戻る。最短ルートの分析を……」

 広いメイン通りに出た彼は、はたと言葉を区切った。

「ナタリー、やっぱり良いや。作戦変更」

 目の前の建物を見ながら、ニヤリと笑う。

「もっといい事を思い付いた」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ