episode 043
その衝撃は、相談室から7番地に向かっていた春都にも伝わっていた。
「何だ?」
その時、腕時計から発信音が聞こえる。
「ナタリー、何かあったのか?」
『何カ異様ナ物体ガ、5号館付近ニ落下シタヨウダワ』
「よし、とりあえず今から現場に向かう」
彼は通路を外れ、5号館にショートカットするコースを取る。
暫く藪地を駆け抜けた彼は、ふと自分が何者かに尾行けられている感覚を覚えた。
走りながら、左手の通信機をONにする。
やや広い空き地に出た春都は、丁度真ん中で立ち止まった。
四方の藪の中から、白衣を着た5人の男が現れ、彼を取り囲む。
その中のリーダー格らしい一人が、静かに口を開いた。
「お前が、源無春都か?」
「確かにそうだが、今はちょいと急いでいてね。サインはまた後で」
春都のジョークを無視して、彼は手を挙げた。
「殺さぬ程度にな」
「え?」
次の瞬間、4つの光の束が春都を弾き飛ばした。
吹き飛ばされて地面に転がった彼は、ピクリとも動かない。
「馬鹿!」
リーダーは、4人を叱責した。
「殺すなと言っただろ!」
「すみません、つい」
「全く」
深い溜息をついて、彼は言った。
「『あの御方』に何て説明したら良いのだ……まあ、後悔しても仕様がない。見付からないうちに、そのガキを始末してこい」
「はい」
男が一人、ぐったりしている春都を担ぎ上げようと近付いた。
が、次の瞬間、彼は地面に転がり、口から泡を吹いて気絶してしまった。
「何っ?!
目を丸くしたリーダーの前で、春都はよっと起き上がって言った。
「あっちゃー、ボールを強く蹴りすぎたかな。潰れていたらゴメンね」
「貴様……何故!?」
「バリヤーって言葉、知っている?」
春都は、わざと悪戯っぽく言った。
「ちいっ!」
別の男が、腰だめに構えたレーザーガンを発射する。
「だから、無駄だって言ってるでしょ!」
光線は、春都の手前30センチ位で四方に拡散された。
「ぐっ!」
「じゃあ、さいならー」
加速を付けて走り去っていく彼を見て、リーダーは指示を出した。
「ヤツを追うぞ、射程距離に入ったらぶっ放せ」
「え、しかし」
バリヤーの威力を見せつけられた他の3人は、彼が発した言葉に躊躇している。
しかし、リーダーはニヤッと笑って言った。
「あの程度なら、レーザーを一点集中すれば破る事ができる」
男達は、静かに春都の後を追い掛け始めた。




