episode 030
「ハルも御籠りか」
書類の山に埋もれた春都を横目で見て、冬流は夜食のカップ麺をすすっていた。
「……も?」
隙間から顔を出した春都が、引っ掛かったワードを尋ねる。
「アキちゃんも女子部で調べ物をしていたって、かすみのバカが話していたんだ」
「調べ物、何を?」
「よく分かんねーけど、A組の女生徒ファイルを持って行ったらしいぜ」
「ふむ」
秋希が何を探しているのか、春都にはよく分からなかった。
室長である自分に報告しないという事は、彼女なりに何か思うところがあって、行動しているのだろう。
「とにかく」
頭を切り換えるためら春都は少し大きめの声を出した。
「謎や疑問があまりにも多すぎる、もっと整理しないと、真実にはたどり着けない」
「お前……まだ先週の下着泥棒事件を引き摺っているのか?」
嫌な記憶を思い出した冬流は、顔をしかめて言った。
「左は、引き摺っていないのか?」
「オカルトは守備範囲外なのでね」
彼は、両手を大きく広げてみせる。
「あの後、さんざん夏純に馬鹿にされたんだ、早く別のデカいことで上書きして忘れたいよ」
「じゃあ、俺に協力してくれ」
持っていたファイルを棚に戻していた春都は、真面目な顔で彼に提案した。
「ん、協力?」
「ああ」
冬流に向き直った春都は、窓の外を指差して言った。
「今から、『7番地』に乗り込む」
「……マジ?」




