episode 017
「おっし、この辺だろう」
体育倉庫から大きなマットを持って来た冬流は、後輩部員とともに校庭脇に広げた。
「犯人は、脚力に相当の自信を持っている。屋上に逃げた後は、必ずここに飛び下りてくるはずだ」
「そこを一気に引っ捕らえるわけですね」
「さすがキャップ」
持ち上げる後輩達にまあまあと手を振り、彼は頭上を見上げた。
と、屋上で何かがゆらゆらと揺れている。
「お、さっそくおいでなすったか」
マットの端を握りしめて声を出す。
「いいかお前ら、ぬかるんじゃねーぞ!」
「ういっす!」
三人は衝撃に備えて、マットを張り直した。
次の瞬間、ドーンという音と共に人間の固まりが落ちて来た。
「ビンゴ!」
冬流は、指を鳴らして喜んだ。
「ついに捕まえたぜ、これで明日のトップは決まり……」
「ギヤアーッ!!」
彼の得意気な台詞は、後輩部員の絶叫によってかき消された。
「ん、何だ?」
途中で邪魔が入ったため、少しムッときた冬流は、その後輩を問い質した。
「どうした藤井、幽霊でも見たような声を出して」
言葉を失ってわなわなと震えている藤井は、影の方を指差して言った。
「ち、違うんです……無いんですよ」
「無い、何が?」
暗闇の中、5メートル程あるマットの為、冬流の居る所からは何も見えない。
やむなく藤井の元に移動した彼は、一体何事かと肩ごしに影を覗き込んだ。
「う……」
冬流が呻くのと共に、藤井は後ろを向いて嘔吐を始めた。
マットの中央には、鋭利な刃物でスパッと切り取られたような、首の無い人間の死体が転がっていた。




