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episode 013
「何て野郎だ、あいつ!」
大きく肩で息をして、冬流は遥か彼方を駆けていく影を睨み付けた。
人間業とは思えないスピードによって、影は彼等の追跡をグングンと振り切ろうとしている。
その時、砂ぼこりを巻き上げて、校庭から飛び出して来た一台のMTBが、冬流の隣に急停止した。
「何なに、もーバテちゃったんですかあ?」
「……かすみんトコの一年か」
紀原愛唯は、掛けていたゴーグルを外してニヤッと笑った。
「モタモタしてると、私がスクープを独り占めしちゃいますよ!」
そう言いながら、目の前でくるっとバックターンを決める。
「おいおい」
「じゃあね、左編集長!」
「あんまり深追いするんじゃねーぞ!」
軽くウイリーを決めて走り出した彼女の背中に向かって、冬流は忠告の言葉を投げかけた。
しかし、その声は愛唯のスピードには追いついていない。
「さあて、コソ泥さん。覚悟はいいかしら?」
校舎の中に消えていく影に、指鉄砲で狙いをつけた彼女は、MTBごと昇降口に突っ込んでいった。




