episode 009
たまみらい学園の中央に位置する大時計台。
その長針と短針は、それぞれ『ビッグマム』と『リトルダディ』と呼ばれている。
ちょうど時計の右半分が学園多摩地区、左側が学園みらい地区となっている事から、短針である親父がみらい地区に向かう時間、つまり午後6時が、春都が隠語で指定した時間だった。
待合せの時刻となり、高等部生協食堂の一角に、たまみらい相談室メンバーが集合した。
「俺の方が、5ミリ高い」
「何言ってるの、ワタシの方が枚数多いじゃない」
席に着くなり、報告書類の数を競い合いはじめた夏純と冬流。
名物の『学園うどん』を啜りながらその様子を見ていた春都は、2人が落ち着いたところで声を掛けた。
「それで、犯人の特徴は?」
「身長165センチ程度」
「やせ型で中肉中背」
「服装は黒の上下、靴はスニーカー」
「犯行時間は午後9時から午前2時まで」
「単独犯で共犯者はなし」
打合せ無く、交互にスラスラと報告していく二人。
「結構」
春都は、満足そうな笑みを浮かべながら言った。
隣で呆気にとられている秋希に向き直る。
「副室長の予想は?」
「あ、はい」
海鮮サラダからフォークを離した秋希は、手元のレポート用紙を読み上げた。
「シミュレーションの結果、次の犯行は83%の確率で……今夜、銀閣2号棟の2階以上で行われると見立てました」
「今夜、か……」
春都は残りのうどん出汁を飲み干して、コトリと丼を置いた。