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episode 000

 少女は、絶句していた。


 目の前に、大きな血溜まりがザラリと広がっている。

 その縁が段々と近付いて来て、爪先に届くようになっても、彼女は一歩も動くことが出来なかった。


 紅い海の中に倒れている物体。

 それは、紛れもなく彼女自身だったからだ。


「嘘……」

 彼女はようやく、掠れる様な声で呟いた。

(あれは私、どういう事!?)

(ここは、特進コースの教室よね?)

(編入試験に受かって、私が通う所よね?)

(なのに……何よこれぇ!?)


「……失敗、か」

 不意に後ろから聞こえた声に、少女は飛び上がった。

 恐る恐る振り返ると、くたびれた軍用ジャケットを着た40〜50位の男が、開け放たれたドアの柱にもたれ掛かっている。

「どうにも、ままならないものだな」


 咄嗟に、彼女は男の方に駆け寄っていった。

 そのまま早口でまくし立てる。


「違うの、わたし何も知らない。それにあれはわたしじゃぁ……」


 男は無表情なまま、怯えている彼女の肩にそっと手を掛けた。

 誰とはなしに呟く。

「まあ、いいか」

「え?」

 それが自分に向けられた言葉だと思った少女は、思わず顔をあげる。


 男は、口元だけを歪めた不自然な笑みを浮かべながら言った。

「今回から、『本物』を使うことにしよう」

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