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誰のために鐘はなる?  作者: たゆたうよ
第五部 火の灯る場所で
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第三章 監視の視線

誰も口を開かなくなった。  

その代わり、意識が鋭くなる。  

視界の端。耳の奥。空気の裏側。


(……見られてる。ずっと)


ルアが足を組み替え、唇に微笑を浮かべた。


「観測者って言葉、もう少し注意して使ったほうがいいかもね。あの子たち、“記録する”だけじゃない。“選別”してる」


「選別?」


「記録と観測、そして“評価”。この空間で何かを“クリア”したとき、それは単なるゴールじゃない。“ふるい”を通されたってこと」


「選別される基準って、何?」


シズハが問いかけると、ルアは焚き火の火を見つめながらゆっくり言った。


「従順さ、協調性、感情の起伏、予測可能性……そして、“逸脱性”。どれも、過去の兵器開発に使われた分類よ。ねえ、考えたことない? わたしたちって、あれに似てるわ」


(“あれ”? 過去にポルルが言っていた言葉。“魂バッファ”……まさか)


「……それって、かつての兵器開発時代に使われたAIの評価指標の基準と同じじゃ……」


言いかけた言葉に、自分で息を飲んだ。


(……この世界、“競技”なんかじゃない。もしこれが、……)


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