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第三章 監視の視線
誰も口を開かなくなった。
その代わり、意識が鋭くなる。
視界の端。耳の奥。空気の裏側。
(……見られてる。ずっと)
ルアが足を組み替え、唇に微笑を浮かべた。
「観測者って言葉、もう少し注意して使ったほうがいいかもね。あの子たち、“記録する”だけじゃない。“選別”してる」
「選別?」
「記録と観測、そして“評価”。この空間で何かを“クリア”したとき、それは単なるゴールじゃない。“ふるい”を通されたってこと」
「選別される基準って、何?」
シズハが問いかけると、ルアは焚き火の火を見つめながらゆっくり言った。
「従順さ、協調性、感情の起伏、予測可能性……そして、“逸脱性”。どれも、過去の兵器開発に使われた分類よ。ねえ、考えたことない? わたしたちって、あれに似てるわ」
(“あれ”? 過去にポルルが言っていた言葉。“魂バッファ”……まさか)
「……それって、かつての兵器開発時代に使われたAIの評価指標の基準と同じじゃ……」
言いかけた言葉に、自分で息を飲んだ。
(……この世界、“競技”なんかじゃない。もしこれが、……)




