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誰のために鐘はなる?  作者: たゆたうよ
第五部 火の灯る場所で
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第二章 火を囲む

テントに腰を下ろし、焚き火を囲むように全員が座った。  

温かいスープの香りが立ち上る。


「なあ、思い出さないか? 最初のミッション……」


カエデがつぶやいた。

“音を立てるな”。あの沈黙の空間。  罠に満ちた床。響き渡る鐘。


「あの時の記録、俺のほうには“単独行動”って書かれてた。だけど、俺はお前と一緒に戦ったつもりだった」


「……わたしの記録には、ちゃんと“カエデと共闘”って残ってたよ」


「じゃあ、どっちが“正しい”んだ?」


言葉が沈黙を呼ぶ。  焚き火の火が、ぱちぱちと音を立てた。


「……そもそも、誰が記録してるの?」


シズハの声が、夜に溶けた。


(“記録”ってなんなの? あの“草原の記憶”と同じ……誰かが見たものだけを、正しいって決めてる)


ルアが目を伏せて、呟くように言った。


「たとえば、私がここで“泣いた”として……でもそれが記録されなかったら、私は泣いてないことになる。そういう世界」


「……それ、ひどい話だな」


カエデがぼそりと返す。


(でも、私も……最初は“あの音”に泣きそうだった。誰にも見られてないって、確信があったから耐えられたんだ)


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