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誰のために鐘はなる?  作者: たゆたうよ
第三部 ともにいた、はずだった
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第五章 四度目の正直

再起動の光が収まりきる前に、シズハはもう立ち上がっていた。


「もう……二度と外さない」

声に力がこもる。


手のひらに残る網の感触。目の奥に焼きついた、すり抜けていく光の軌道。

あれは“失敗”じゃない。あれは“判定そのもの”が変わっていた。


「やっぱり、この世界……観てる」


隣に立ったカエデが小さく息を吐く。

「俺も、今回は何か掴めそうな気がする」


ふたりの距離は、最初よりも近かった。

言葉にしなくても、理解が伝わる“空気”がある。


カエデが拾ったのは、〈振動センサー〉。

シズハは再び〈音誘導機〉を手に取る。


「やつの移動はリズムだ。お前がタイミングを引き寄せろ。俺が網で叩き込む」


「できる?」


「できるかじゃねぇ。“やる”んだよ」

それは、ただの気合じゃなかった。


三度の失敗を経て、カエデの声には“学習”の色があった。


《制限時間:5分》

再び電子音が鳴る。


(読む。感じる。疑う。でも、動く)


シズハの中で、記憶と直感が“融合”を始めていた。


――あの角では一度跳ね返る。反転は、前兆がある。通路の影、風の流れ、天井の鳴き。


(あそこに……来る)


カエデが先に動く。

通路を半周して、正面の網ポイントに回り込む。

無駄のない動き。


標的が跳ぶ。


シズハは音誘導を仕掛け、フェイントをかける。


逃げる、回り込む、戻る。


標的が揺れる。


その軌道を、カエデが正面から読んだ。


「——今だ!!」

シズハが指を叩き、音誘導を反転。


標的が反応して跳ね返った——その瞬間、カエデの網が展開された。


金属音。

網の光が収束する。


一瞬の静寂。


通路の奥、白い影が止まっていた。

光の中で、捕獲が完了していた。


「……やった……」

声が震える。だが、確かに届いた。


「……ああ。やったな」

その瞬間、空間に柔らかな鐘の音が響いた。


ゴォォォォン……

けれど、今までとは違う。

重く、冷たい“罰”の音ではない。


祝福のような、静かな共鳴だった。


《MISSION CLEAR》

《クリア回数:1》

《試行記録:4回》

《協調率:89%》


シズハはそっと息を吐いた。

そして思った。


(二人だったから、ここまで来られた)




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