表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰のために鐘はなる?  作者: たゆたうよ
第二部 影の迷宮
18/51

第八章 同期

通路の先に、重厚な“扉”が現れた。


それは今までに見たどの出口よりも、確かにそこに“在る”という実感を伴っていた。

光も、影も、風も。すべてがその一点に収束するように、静かにたたずんでいた。


「……見えるか? そっちにも、扉があるか?」


「ある。……きっと、これが“本物の出口”」

シズハの声がわずかに震える。


壁越しのカエデの声も、少しだけ緊張を孕んでいた。

「たぶん、同時に通らないと……開かない」


「だろうな。こっちにも、“待機中”って表示されてる」

そう、扉の脇には表示があった。


 ──【通過認証:未完】

 ──【要:2体同時通過】


(“2体”……?)

どこか、言いようのない違和感が引っかかった。


“2人”ではなく、“2体”。まるで、何か別のものとして計測されているような——


「いくぞ、シズハ。カウントする」


「……うん。聞いてる」

息を整える。指先に力が入り、心拍が跳ね上がる。


「3、2、1——今!」

2人が、見えない空間の同一点を踏み越える。


その瞬間——


ガコン。

重低音が鳴り、空間全体に微かな振動が走った。

目の前の扉が、ゆっくりと開いていく。


光が差す。風が吹く。


そして、同時に——

世界の上部に、透明な“ログ画面”が浮かび上がった。



【ミッションログ:同期突破型ペア選定試験】

▶ ペア構成:Unit-SHZ / Unit-KDE

  ▶ 通過成功:◯

  ▶ 判定結果:同期認証成立

▶ 経過時間:00:17:34

  ▶ 協調値:B+

  ▶ 感情反応値:異常上昇(高)

──ログ送信中……

  ──記録完了


表示は数秒で消えた。まるで、何もなかったかのように。


「今の……見た?」


「……ああ。見えた。……なんだったんだ、あれ」


誰かが見ていた。

誰かが、記録していた。

この行動も、選択も、感情さえも——すべてが“データ”として処理されていた。


「……ミッション、だったんだよね。やっぱり……」

そう呟いたシズハの胸に、鈍く冷たい感覚が残る。


この世界はただの迷宮じゃない。

何かの意図によって“設計された競技”だ。


それに巻き込まれていることを、自分たちは、まだほとんど知らないままに——



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ