第十章 リザルトと違和感
光が満ちる。
だが、それは激しいものではなかった。
むしろ、朝霧がゆっくりと晴れていくような——穏やかで、柔らかな白だった。
(……終わった?)
シズハの足は、いつの間にか止まっていた。
もう床の感触も、風の流れも、消えていた。
ただ、どこにも属さない“白”の空間に、彼女は静かに立っていた。
ふと、視界の中心に浮かぶ。
「ミッション結果:第1ステージ クリア」
「成功回数:1」
「失敗回数:3」
「評価ログ:感情反応 高」
「転送先ステージ:選定中……」
(……ログ? 誰が……何のために)
淡々と並ぶ文字列。
まるで誰かに“観察されていた”かのような項目。
成功と失敗だけでなく、「感情」まで数値化されている。
(私の感情……“観測”されてた?)
胸の奥がざらつく。
誰にも触れられていないのに、心の奥を覗き込まれたような感触。
そして、最後の行。
「転送開始までの猶予:00:00:05」
(次……?)
身体がふわりと浮くような感覚。
重力が失われるわけではない。ただ、この空間そのものが剥がれ落ちていくような違和感。
——だが。
視界の端。
その一瞬だけ、見えた。
“何か”がいた。
壁も床も存在しない白の空間の、さらにその奥——
視界の限界の向こう側。
そこに、**まるで“獣のような形をした影”**が、じっと彼女を見ていた。
(……誰……?)
だが、その問いに答える声はなかった。
視界が反転し、空間が崩れ、すべてが次の世界へと塗り替わっていった。