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嘘と真実の狭間  作者: 柊れい
第6章
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第6章 第2話: 過去と現在の交錯

次の日の朝、目覚めた時から頭の中にはまだ昨日の涼との会話が残っていた。涼が悠斗を見張っていたと言ったこと、それが私を守るためだったという説明――でも、それだけではどうしても納得できなかった。


学校へ向かう道すがら、ふと立ち止まって、周りを見渡した。見慣れた景色、いつもの通学路。だけど、すべてが少しずつ変わっている気がしてならない。私自身も、そして周りも。この事故が起きるまでは、日常がこんなにも脆いものだなんて思いもしなかった。


歩きながら、記憶の断片がフラッシュバックする。悠斗の冷たい目、背中を押された瞬間、車のクラクション、そして意識が遠のく痛み――そして目覚めた時には病院のベッドの上だった。


ーーあの時、涼はどこにいたんだろう?


その疑問が頭から離れない。彼はあの場所にいたと言った。でも、もしそうなら、どうして悠斗が私に手をかけた瞬間に助けてくれなかったのか?事故を未然に防げたはずではないか?


「おはよう、沙耶!」


突然、涼の声が背後から聞こえて、私はハッとした。いつの間にか彼が私のすぐ後ろに立っていた。


「びっくりした…」


「ごめんごめん、驚かせるつもりはなかったんだけどさ。今日も一緒に学校まで行こうかと思って。」


涼の顔はいつもと変わらない、優しげな表情。でも、私は昨日の疑念が拭い去れないまま、少し距離を置くようにして歩き始めた。


「昨日、少し気になることがあって…」涼に視線を向けず、私はつぶやいた。「どうして悠斗のこと、もっと早く教えてくれなかったの?守ってくれてたのはありがたいけど、私にも知る権利があったんじゃない?」


涼は一瞬、答えに詰まったようだった。けれどもすぐに表情を取り戻し、静かに言った。


「沙耶が心配だったんだよ。もし悠斗のことを話したら、君がもっと怖がるんじゃないかと思って。だから、話さなかった。」


その言葉は優しさに満ちているように思えたけど、私の胸の中では疑いの種が次第に大きくなっていく。涼は本当に私のためを思って行動していたのか?それとも、別の何かを隠しているのか?


「…本当?」


「もちろん、本当だよ。君が一番大切だからさ。」


その言葉に、私は一瞬息を呑んだ。涼は昔から私のことを大切にしてくれていた。それは間違いない。でも、それと同時に、今は何かが違う気がする。彼の目の奥にあるもの、それが何か分からない。


++++++++++


学校に着くと、教室ではいつものように玲奈が私を迎えてくれた。玲奈は明るく、いつも私を励ましてくれる存在だ。彼女と話すと、少しだけ心が軽くなる。


「沙耶、昨日は涼と何かあったの?」


玲奈が心配そうに聞いてきた。彼女には何でも話してきたけれど、悠斗のことについてはまだ触れていなかった。あの日の事故が私のせいなのか、悠斗のせいなのか、まだ自分の中で整理がついていないからだ。


「ううん、別に何も。涼はいつも通り、私を気遣ってくれてるよ。」


「そう?でも、沙耶、無理しちゃダメだからね。何かあったら、ちゃんと私に話してよ。」


玲奈の優しさが心にしみる。彼女は何も知らないけれど、私の状況を察してくれているような気がした。


その日は何事もなく過ぎていったけれど、私の中では次第に疑念が大きくなっていった。涼の優しさに隠された何かを探るため、私は放課後、思い切って涼に直接聞くことにした。


++++++++++


「涼、ちょっと話があるんだけど、放課後少し時間ある?」


「もちろん、どうしたの?」


放課後、学校の近くにあるカフェで向かい合った私たち。いつもならリラックスして話せる空間なのに、今日はどうしても落ち着かなかった。心の中で、何かが引っかかっている。


「涼、本当のことを教えてほしい。悠斗のこと、事故のこと、全部。私に隠してることがあれば、今言ってほしいの。」


私が真剣な顔でそう言うと、涼は少し戸惑ったような表情を見せた。彼はしばらく沈黙していたが、やがてゆっくりと口を開いた。


「沙耶、君に嘘をついたことはないよ。俺は本当に、君のことを守りたいだけなんだ。」


「でも、あの時、悠斗が私に何をしようとしてたのか知ってたなら、どうして助けてくれなかったの?私が事故に遭う前に、どうして止めなかったの?」


涼は深く息をついてから、言葉を選ぶように話し始めた。


「沙耶、俺もあの瞬間、どうすればいいか分からなかったんだよ。悠斗が君に手をかけるなんて、想像もしてなかった。ただ、君が危険だってことは分かってたから、できるだけそばにいた。でも…あの瞬間は、どうしても間に合わなかった。」


涼の言葉には真実味があった。彼が私を守ろうとしてくれたことは分かる。でも、心の中ではまだ何かが引っかかっていた。


「涼…本当にそれだけ?」


「それだけだよ、沙耶。君を守るために、できる限りのことをしたつもりだ。」


私はしばらく黙っていた。涼の言葉は真摯で、彼の優しさが伝わってくる。だけど、それでも心の中に残る疑問が消えない。


++++++++++


その夜、家に帰ってからも、涼の言葉が頭をぐるぐると回っていた。彼が本当に私を守ってくれたことは信じたい。だけど、彼が悠斗のことを知っていたなら、どうしてもっと早く何かできなかったのか。


そして、もう一つの疑問。涼が事故の日、あの場所にいたのは本当に偶然だったのか?もしかして、彼は最初から何かを知っていて、私の行動を監視していたのではないか。


心の中に浮かび上がる不安と疑念。涼の優しさの裏に、何か別の意図があるのではないかという思いが消えない。


ーー本当に涼を信じていいの?


自分の中でその問いが何度も繰り返される。悠斗のこと、涼のこと、すべてが混ざり合い、私の心を揺さぶり続けていた。


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