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嘘と真実の狭間  作者: 柊れい
第6章
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第6章 第1話: 揺らぐ信頼

夕方の光が街を黄金色に染める帰り道、私の心の中には静かならぬ感情が渦巻いていた。涼が、私のことを守ってくれている――そう信じていたはずなのに、最近はどうしてもその気持ちに違和感を覚える。彼は私の幼馴染みで、いつだって私の側にいてくれた。けれども、悠斗との一件を境に、彼の行動に何か別の意図が隠されているのではないかという疑念が芽生え始めていた。


涼はいつも優しい。事故の後も、私を気遣い、側にいてくれた。けれど、その優しさが今は逆に不自然に感じる。事故前の私と悠斗の関係について、涼は何も言わず、ただ静かに見守ってくれているように見えたが、本当のところはどうだったのだろうか。彼が何も知らないわけがない。事故の日、悠斗とのことも知っていたはずだ。


「何か隠しているんじゃないか?」


心の奥で小さな声が囁く。だけど、そんなはずはないと打ち消す。彼は私の幼馴染みで、ずっと信じてきた人だ。それなのに、なぜこんな疑念を抱いてしまうのか。


家に着き、玄関を開けた途端、母が「涼くんから連絡があったわよ」と言った。


「えっ?」私は一瞬驚いた。涼からは直接何も聞いていない。彼はしばしば家に寄ることもあったが、今日は特に何も言っていなかったはずだ。


「沙耶、大丈夫かって気にしてたの。学校でも何か様子が変だったんじゃないかって。」


母の言葉に違和感があった。涼が母に連絡するのは珍しいことではないが、何か私に直接言うべきことがあるなら、普通は本人に言うだろう。それをわざわざ母に話すなんて、どういうつもりなのか。私はスマホを取り出し、涼にメッセージを送ろうとしたが、そこで一瞬手が止まった。


ーー涼、何か私に言いたいことでもあるの?」


思い切って聞いてみようかと思ったが、言葉にできなかった。どこかで彼に直接聞くことを恐れていたのだ。もし彼が本当に何かを隠しているとしたら、それを聞いたところで何かが変わるだろうか?


++++++++++


翌日、学校に向かう道すがら、私は涼といつも通り待ち合わせをしていた。彼は変わらず優しい笑顔で私を迎え、他愛ない会話を交わした。しかし、私の心の中ではその笑顔の裏に何かが隠されているのではないかという疑念が消えなかった。


「沙耶、元気そうで良かった。昨日、お母さんと話したけど、ちょっと心配だったんだよ。」


「…心配してくれてありがとう。でも、涼、何か隠してない?」


言葉が自然と口をついて出た。彼の顔が一瞬固まったように見えたが、すぐにいつもの柔らかい表情に戻った。


「隠してる?どういうこと?」


私はためらったが、ここで話さないとこの疑念はずっと消えない気がした。


「涼、悠斗のこと、本当は知ってたんでしょ?私たちがあの時に喧嘩して、事故に巻き込まれたこと…。悠斗のことについて、何か知ってるなら教えてほしい。」


涼は一瞬黙り込んだ。私の言葉にどう答えるべきかを考えているようだった。しかし、やがて彼は静かに口を開いた。


「沙耶、もちろん知ってるよ。悠斗がどんな奴かも、事故のことも。でも、今は君にとってそれが一番辛いことだから、敢えて聞かないようにしてたんだ。」


涼の言葉は真摯に聞こえたが、私の心にはまだもやもやが残っていた。彼は本当に私を守るために何も言わなかったのか?それとも、何か別の理由があるのか?


++++++++++


その日、放課後に涼と二人で帰ることになった。彼は私をいつも通り気遣ってくれていたが、どこかぎこちない空気が流れていた。私が問いかけたことで、彼にも何かしらの葛藤が生じているように感じた。


「沙耶、俺は君を守りたいだけなんだ。悠斗が君に近づかないようにって、それだけを考えてたんだよ。だから…ごめん、もっと早く言うべきだった。」


「涼…でも、なぜあの日、あの場所にいたの?」


これが私の中で最も気になっていたことだった。彼がどうして私たちの喧嘩の現場に居合わせたのか。それを聞くと、涼はしばらく口を閉ざし、言いづらそうに言った。


「実は…悠斗が君に危害を加えようとしてることを前から知ってたんだ。だから、君を見張ってた。おかしいと思うかもしれないけど、沙耶が心配で仕方なくて…」


涼の言葉に私は驚きを隠せなかった。涼は私を見守っていたということだが、それは逆に私が感じていた違和感を裏付けるものだった。彼が私を守るために行動していたというなら、どうしてもっと早くそのことを話してくれなかったのだろう?


「どうして言わなかったの?」


「言えば君が余計に不安になると思ったんだ。悠斗がどんな奴か知ってるだろ?君を追い詰めてたのも、あいつだ。だから、俺はずっと君を見守るしかなかった…。」


涼の声は真剣そのものだったが、私の胸にはまだ言葉にならない疑念が残っていた。彼が本当に私を守ろうとしているのなら、もっと早く助けを求めてくれたはずだ。それなのに、なぜ今まで何も言わなかったのか。


++++++++++


家に帰った後も、涼の言葉が頭の中を駆け巡っていた。彼が私を守ってくれていたということは信じたいが、どうしても完全には信じきれなかった。悠斗のこと、事故のこと、そして涼の行動――それらが複雑に絡み合い、私の心の中に大きな闇を落としていた。


涼は本当に私を守ってくれているのだろうか?それとも、彼の中にまだ何か隠された真実があるのか?その答えは、まだ見つかっていなかった。

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