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嘘と真実の狭間  作者: 柊れい
第5章
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第5章第3話: 噂の真相

次の日、涼と玲奈が私のところにやってきた。放課後の教室、もうほとんどの生徒は帰ってしまっていて、静かな空間に私たち三人だけが残されていた。窓から差し込む夕陽が教室の床にオレンジ色の影を作っている。


涼が最初に口を開いた。


「沙耶、最近さ…悠斗の様子がおかしいって感じないか?」


私はその言葉に驚き、少し身を乗り出した。涼は真剣な顔をしているし、玲奈もどこか不安そうな表情だ。何か言いたげな様子が伝わってくる。


「どういうこと?」


私は質問を返したが、心のどこかで、彼らが何を言おうとしているのかが薄々分かっていた。悠斗が見せる微妙な態度の変化、私に対する苛立ち、それに加えて時々感じる背筋が寒くなるような視線。だが、そんなことは自分の思い過ごしだと思いたかった。


玲奈が心配そうに続けた。


「実はね、最近学校で怖い噂が立ってるの。悠斗が誰かを追い詰めてるんじゃないかって。直接何かあったってわけじゃないんだけど、みんな彼の態度が変わってきたって言ってる。なんか怖い感じがするって…」


玲奈の言葉に、私は無意識に身震いした。追い詰めてる?悠斗が?


涼が口を挟んだ。


「沙耶、お前も感じてるんだろ?あいつ、最近マジでおかしいよ。あの前の事故の時だって、悠斗が現場にいたのに、なんでお前に何も言わずにそのまま立ち去ったんだよ?涼しい顔して、まるで関係ないみたいにさ」


その指摘は鋭かった。確かに、あの時の悠斗の行動は不可解だった。私がトラックに轢かれそうになったあの瞬間、なぜ彼は何も言わずに去ってしまったのか。それを問いただしても、彼は何も答えず、ただ曖昧な返事をするだけだった。私の中での疑念が再び大きくなり、心臓が強く脈打つのを感じた。


でも、それでも私は悠斗との関係を断ち切れない理由があった。


「涼、玲奈…わかってる。でも、今はまだ悠斗と距離を置くことはできないの。私の記憶が全部戻ってないんだ。事故の直前に何があったのか、全部思い出さないといけない。でも、そのためにはまだ彼のそばにいる必要があるの」


私の言葉に二人は驚いたような表情を浮かべた。玲奈はすぐに言い返してきた。


「でも、沙耶、それって危険なんじゃない?悠斗が何か隠してるって感じるし…正直、彼が事故に何か関わってるんじゃないかって思えてきて…」


玲奈の声が震えているのを感じた。彼女は本気で私を心配しているのだろう。でも、私はその場で否定することができなかった。玲奈が言っていることが、私の心にも深く刺さっている。だが、悠斗が事故に関わっていたという決定的な証拠はまだない。そして、記憶が完全に戻らない限り、何も確信を持てないのも事実だった。


「玲奈、気持ちはわかるけど…私には今、悠斗が必要なの」


私の言葉に涼が強い口調で反論した。


「沙耶、何言ってんだよ。お前、危ない目に遭ってるってこと分かってんのか?あいつに何かされる前に離れた方がいい。記憶が戻るのも大事かもしれないけど、お前の安全が一番だろ」


涼の目は真剣だった。彼が私のことを本当に心配してくれているのは、痛いほど伝わってくる。私だって、悠斗から距離を置くべきだと思わないわけじゃない。でも、それができない理由があるのだ。


「わかってる…でも、私はどうしても記憶を取り戻したいの。悠斗と一緒にいることで、少しずつフラッシュバックしてきてるんだ。だから、今はまだ離れるわけにはいかない」


涼と玲奈は顔を見合わせた。彼らの不安と心配が表情に表れている。でも、私の決意を覆すことはできないと悟ったのだろう。玲奈が小さくため息をついた。


「沙耶がそう言うなら、私たちはそれを尊重するよ。でも、もし何かあったらすぐに私たちに相談してね。約束して」


玲奈の目に涙が浮かんでいるのを見て、私は胸が痛んだ。彼女がどれだけ私のことを心配しているのか、その優しさが胸に迫ってくる。


「うん、ありがとう、玲奈」


私は微笑みながら答えたが、心の中では複雑な感情が渦巻いていた。悠斗との関係を続けることが正しいのか、それとも危険なのか。それが分からないまま、私はただ、記憶を取り戻すために彼と一緒にいることを選び続けている。


その後、涼も玲奈も静かに私に別れを告げ、教室を後にした。教室には再び静寂が訪れ、私は一人取り残された。


「本当に…これでいいんだよね?」


自分に問いかけるように呟いたが、答えは出なかった。

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