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嘘と真実の狭間  作者: 柊れい
第4章
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第4章 第3話: 記憶のかけら

学校での授業中、ぼんやりと窓の外を眺めていた私は、昨日玲奈と話したことを思い返していた。記憶が少しずつ戻ってきている実感はあるけれど、そのフラッシュバックは決して連続しているわけではない。まるで、ひび割れたガラスの破片のように、散り散りに断片的に戻ってくる。


ふと、頭の中にまた一つの映像が浮かんだ。それは、私と悠斗が並んで笑いながら歩いている光景だった。場所はおそらく学校の帰り道だろう。夕焼けに染まった空の下、私たちは手をつないでいた。その記憶は、まるで昨日のことのように鮮明だった。


「沙耶?」


隣から玲奈の声が聞こえて、私ははっと我に返った。彼女は心配そうな顔で私を見つめている。


「大丈夫? さっきからぼんやりしてたけど、また何か思い出した?」


玲奈の問いに、私は軽く頷いた。


「うん……また少し記憶が戻ったみたい。今度は悠斗と一緒に歩いてた時のこと」


玲奈はその言葉に目を輝かせた。


「それってすごいじゃん! 記憶がどんどん戻ってきてる証拠だよ!」


彼女の喜びようを見て、私は自然と微笑んだ。玲奈は私の記憶が戻ることを本当に心から望んでくれている。彼女の励ましがなければ、私はここまで冷静に向き合えなかったかもしれない。


「そうだね……でも、まだ断片的で、すべてが繋がってるわけじゃないんだ」


「それでも進歩だよ。少しずつでいいから、全部思い出していこうよ。私もできる限り手伝うから!」


玲奈の言葉に励まされ、私は少しだけ勇気を持つことができた。けれど、その一方で悠斗のことが頭から離れない。彼は、私が記憶を取り戻すことをどこか恐れているような気がしてならなかった。


++++++++++


昼休み、玲奈と涼と一緒に屋上でお弁当を広げていると、遠くから悠斗の姿が見えた。彼は何か考え込んでいるようで、私たちに気づくことなく歩いていく。


「悠斗、元気ないみたいだな」


涼がぽつりとそう言った。玲奈も同意するように頷く。


「沙耶と付き合ってるのに、なんであんなに不機嫌なのかな? もっと嬉しそうにすればいいのに」


私はその言葉に、心の中で疑問が膨らんでいく。確かに、私たちは今「付き合っている」ということになっている。けれど、私が記憶を失っている間に、彼の中で何かが変わったのだろうか。


その時、また一つの記憶がフラッシュバックした。それは、悠斗と付き合い始めたばかりの頃のこと。彼が私に初めてプレゼントをくれた日のことだ。小さなペンダントだった。緊張しながら渡してくれた彼の顔を、私は覚えている。嬉しかったその瞬間が、鮮明に思い出される。


「沙耶、どうしたの?」


玲奈の声に、私は再び現実に引き戻された。


「また記憶が戻ったみたい……今度は、悠斗がプレゼントをくれた時のこと」


「え! どんなプレゼントだったの?」


玲奈が興味津々に聞いてきたので、私は少し恥ずかしそうに微笑んだ。


「小さなペンダントだった。最初のデートで、すごく緊張してたみたいで、顔が真っ赤だったのを覚えてる」


玲奈は嬉しそうに拍手をしながら笑った。


「それってすごくロマンチックじゃない! そういうの、どんどん思い出していこうよ。きっと他にもたくさん素敵な思い出があるはずだから」


玲奈の言葉には、本当にその通りだと思う部分もあった。けれど、悠斗の優しさに対する違和感が、どうしても消えない。彼があの時のままの彼なのか、それとも――


その時、視界の端に悠斗の姿が再び映り込んだ。彼は私たちに気づくと、急いでこちらに向かって歩いてきた。彼の足取りには、どこか焦りが感じられた。


「沙耶、ちょっと話があるんだけど……いいかな?」


彼の声はいつもと同じように優しかった。けれど、その声の裏には何かが隠されているようにも思えた。私は彼に頷き、玲奈たちに軽く手を振ってから、悠斗と二人きりで話すことにした。


++++++++++


二人で歩き出すと、悠斗はすぐに話し始めた。


「記憶、少しずつ戻ってきてるんだってな」


彼の口調はあくまで穏やかだったが、その言葉には微かな緊張が滲んでいた。


「うん、まだ断片的だけど……少しずつ戻ってきてる」


そう答えると、悠斗は一瞬黙り込んだ。そして、少しだけ目を伏せて、再び口を開いた。


「沙耶、俺たち……今は順調だよな?」


その言葉に、私は思わず立ち止まって彼の顔を見つめた。順調――その言葉が、何かを隠そうとしているように感じた。


「悠斗、何か隠してるの?」


彼の目が一瞬だけ揺れた。けれど、すぐに表情を整え、微笑んでみせた。


「何も隠してないさ。ただ、お前がまた記憶を失ったら……そう思うと怖いんだ」


その言葉には、確かに真実が含まれているように感じた。けれど、それだけではない。もっと深い部分で、彼は何かを隠している。私はそのことを確信し始めていた。


「大丈夫だよ、悠斗。私は少しずつでも記憶を取り戻すから」


そう言って微笑んでみせると、悠斗は少しだけ安堵したように見えた。けれど、その安堵の裏にある不安を、私は見逃さなかった。


彼が何かを隠している――それが、ますます確信に変わっていくのを感じながら、私はその場を後にした。


++++++++++


その日の帰り道、私の中にある記憶の断片が、少しずつ形を取り戻しつつあることを感じていた。悠斗との関係に違和感を覚えつつも、その優しさの裏に隠された真実に迫る時が近づいていると感じた。私の記憶は、今後どんな形で蘇り、そしてどんな真実を暴くのだろうか。


次第に、私の心の中に確信が芽生えていった。悠斗との関係、そして私の記憶――そのすべてが繋がる時が、近づいているのだ。

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