第5話 寄宿舎にお引越し
魔法学園は入学式の一週間前から寄宿舎に入れるので、ハヤト様とケント様と一緒に荷物の搬入にお出かけすることになった。
寄宿舎は学年毎に分かれているから、兄たちやオスカー君とは別の棟になっているんだ。
僕が入るのは高位貴族用の部屋で、護衛や従者用の部屋もついている、日本でいうところのファミリータイプのマンションのような作りなんだ。
ハヤト様とケント様は交代で寝泊まりするみたいだし、僕は自分のことは自分でできるから従者は必要ないので、あまり広すぎない2LDKタイプの部屋にしてもらったんだ。
それでも結構広くて、部屋には大きなベッドが置いてあった。
キッチンも魔道具が完備されていて、お茶はもちろん、料理も作れるようになっていた。
でも、僕は前世でも料理はしたことがないから、学食の方で兄たちとオスカー君と三食一緒に食べる予定。
家具とか設備は据え付けだし、リネン類は寄宿舎に常駐しているメイドのお姉さんがベッドメイクやら掃除や洗濯もしてくれる。
着替えとか学用品を片付けるだけだから、あっという間に終わっちゃった。
寄宿舎には専属の執事やフットマンもいるので、フットマンのお兄さんに寄宿舎の共有スペースのことを教わったり、学食の場所を案内してもらった。
学食の前で兄たちとオスカー君と合流できたので、学食の給仕さんに六人掛けのテーブル席に案内してもらった。
兄たちとオスカー君は、ハヤト様とケント様とは旧知だったらしく、にこやかに挨拶を交わしていた。
兄たちもオスカー君も聖騎士の鍛錬場でお二人に指導してもらったことがあるんだって。
いいなぁ・・・
「今度アルの家で魔法や調薬の指導をしてやるからな。」
ケント様がそう言って僕の頭をナデナデしてくれた。
「はい!」
大賢者な曾祖父から直接指導してもらえるなんて、僕ってものすごくラッキー!
「あ、今日のランチ、ルルの好きなピーチパイがデザートだよ。」
給仕さんが運んできてくれたランチのプレートには、メルク兄さまの言う通り、ピーチパイが一切れのっていた。
「俺の分、ルルにやるよ。」
ランス兄さまがそう言って僕のプレートにピーチパイを乗せてくれた。
「ありがとう!」
前世も今世も、一番好きな果物は白桃なんだよね。
前世では、お見舞いで貰った高級桃缶が特に好きだったな。
そういえばあの子も桃缶好きだったな。
あれ?
あの子って、誰だったっけ?
・
・
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その日の夜、僕は前世の夢を見た。
前世で入院していた病室で、MMORPG「漆黒の輪舞」でフレンド登録した誰かと一緒にプレイしていた。
「なんで、こんなぽっちゃりなキャラを作ったんだ?」
また治療から逃げ出して僕の病室に隠れ込んだあの子が僕にそう尋ねてきた。
「漆黒の輪舞」は自分で好きなようにキャラクターのメイキングができるように、色々な体型や顔の部位のパーツがあるんだ。
だから僕は、僕とは真逆な、健康そうなぽっちゃり系の少年のキャラクターを作ったんだ。
「健康そうだし、ほっぺがぷにぷにで可愛いでしょ。」
「職業は何にしたんだ?」
「僧侶。顔はうちの両親が新しく作ってるゲームの悪役令息をモデルにしたんだよ。」
「悪役ぅ~? なんで、そんなのモデルにしてプレイデータ作ったんだ?」
「ネタバレになるけど聞きたい?」
「いや、聞きたくない!」
「実はね、レベルが上がると~」
「ネタバレ禁止!」
「ふふっ。じゃあ、君はどうして勇者にしたの?」
「勇者レベルが上がれば好きなNPCをパートナーとしてパーティに入れられるじゃん。」
「ああ、勇者ってそんな仕様があるんだね。それで誰をパートナーにするの?」
「俺がパートナーにしたいのは・・・」
その視線の先には・・・
余談
ランスロットは甘いお菓子が苦手なので、いつもはメルクリウスかオスカーにデザートを食べてもらっています。
シャルルは小食なので、残したお肉はランスロットが食べてくれます。




