第1話 乙女ゲームの世界に転生しました
前世の僕の両親はゲーム会社の制作者だった。
前世の両親は「漆黒の輪舞」というMMORPGを原作にした恋愛シミュレーションゲーム、所謂乙女ゲームである「桃色の狂詩曲(仮題)」のキャラクターデザインと設定、脚本を担当していたんだ。
僕の記憶が確かなら、そのゲームのヒロインは平民上がりの伯爵令嬢か、由緒ある血筋の侯爵令嬢のどちらかを選べる仕様だったかな。
攻略対象者は一部共通で、逆ハーレムエンドは無かったと記憶しているんだけれど、確か、脚本担当の前世の母親が、
「逆ハーなんてふざけたことするヒドインは断罪バッドエンドまっしぐらにしてやるわ!」
と、叫んでいたような気がする。
以前作った別の乙女ゲームの二次創作で、ヒロインに逆ハーさせる18禁的なものが流行ってしまって、そのあまりにも原作を無視した愛情の欠片も無い無法ぶりに、かなりお冠だったんだよね。
裁判沙汰にもなったらしいよ。
だから、逆ハー狙いで複数の攻略対象者たちの好感度上げようとすると、逆に好感度がマイナスになって即バッドエンドになる仕様にするって言ってた。
そして悪役令嬢は存在せず、選ばなかったヒロインは好敵手として現れ、百合っぽい友情エンドも構想していたっけ・・・
悪役と呼べる存在はヒロインに懸想してちょっかいをかけてくる当て馬的な悪役令息だけなんだ。
平均以下の身長のぽっちゃり体型で、色白で髪まで白いせいで一部の攻略対象者たちからは「白い仔ブタ」と蔑まれ、ヒロインたちからは白い目で見られる残念な悪役令息シャルル・ド・ブランシュール。
序盤であっさり、早々に学園から消える、存在感の薄い悪役なんだよね。
そのシャルル・ド・ブランシュールに、何の因果か、僕は転生していたんだ。
白血病で死んだ前世の僕の享年は16歳。
今の僕、シャルルの年齢は5歳。
つい最近、流行り病で死にかけた時に走馬灯のように前世の記憶が押し寄せてきて、今の自分の記憶と人格を統合したり整理するのに大変だったんだよね。
でも、ゲームが始まる10年も前に前世の記憶が戻ったのは僥倖かもしれない!
悪役令息とは言ってもシャルルへの断罪は国外追放とか処刑という重い刑罰はないんだ。
修道院送りになるだけだもの。
しかも非公開の裏設定で、ゲームエンドの10年後にシャルルは「教皇」に上り詰めるポテンシャルを秘めているんだ。
本家の「漆黒の輪舞」に登場する、出自と年齢不詳の美しき教皇・アマデウス13世がシャルルの将来の姿なんだよね。
ダメダメなのは王立学園に通っている間だけ。
ゲームエンド後は修道院での地道な修業で秘めた実力が開花し、「教皇」の称号が出現するんだよ。
正に神に愛されし者の名を持つにふさわしい、栄光の未来が待っているんだ。
乙女ゲームでのシャルルは魔法伯家の嫡女の末っ子の三男、病弱だったせいで家族に溺愛されて育ったんだ。
甘いものが大好きな、ぽっちゃり我儘ボディな坊ちゃんなんだ。
ヒロインに一目ぼれして、ヒロインの恋路を邪魔しまくるんだけれど、いつも失敗に終わるんだよね。
ゲーム序盤、夏季休暇前の学期末のパーティで、学園で犯したトラブルの責任を問われて修道院送りになってしまうんだ。
そしてヒロインは、この断罪劇までにどう振る舞っていたかによって、後々の攻略に影響を与えることになるんだよね。
本家の「漆黒の輪舞」で魔王が出現する十何年か前の、平和な時代設定の乙女ゲームなので、断罪と言っても学園のルールの下に処罰されるだけだから命の危険は全く無いんだ。
だから、もしも強制力があっても、安心してゲーム通りの残念な悪役を全うできそう。
僕はゲームのシャルルの裏設定通り、修道院で修道士から司教の資格を取って、断罪の10年後には教皇になる予定。
この世界の修道院の修業は神学や治癒魔法、浄化魔法の勉強の他に薬草育ててポーション作ったり、バザー用にお菓子とか加護付きのハンカチ、タオル、服、アクセサリーなんかを作っているんだ。
前世の僕は長い入院生活もあって、編み物が趣味の手芸男子だったから、天職かもしれない。
刺繍とか、縫物系もしたかったんだけれど、針が危ないからってさせてもらえなかったんだ。
でも、今世は縫物系もし放題!
しかも司教以上の階級になれば世界各国の転移陣をフリーパスで転移できるんだ!!
将来、教皇になったら教会本部でまったりしつつ、世界各国を表敬訪問の体で観光するんだぁ♪
あ、でも断罪の10年後とか待っていられないから、早めに、今からコツコツ修行しちゃおうかな?
そうすれば本家の「漆黒の輪舞」で将来復活する魔王も、サクッと倒せるし!
断罪後、修道院に入ったら教皇になる前に聖者になるのもありだよね。
そしたら浄化の旅で聖地巡礼もできるもん!!
裏設定によると、シャルルのぽっちゃり我儘ボディって、お菓子の食べ過ぎって周りからは言われているけれど、本当は魔力詰まりが原因の魔力過多症のせいなんだよね。
魔力の流れが詰まっていて、放出とか循環がうまくできなかったんだ。
それが肉体に影響して脂肪が膨れ上がったという事らしいよ。
精通すれば余分な魔力を子種として放出できるんだけど、シャルルにはそれも無かったらしい。
だから魔力詰まりのせいで、教会や学園の魔力測定でも測定機に魔力を流せなくて「魔力無し」と誤診されたんだ。
そのせいで学園の魔法科の授業は門前払いで、魔法や魔力の事は何一つ学べなかったんだ。
せっかく珍しい全属性持ちなのに、ゲームのシャルルは断罪されて修道院へ行くまで自分に魔力があることを知らなかったんだ。
シャルルが魔力持ちだと判明したのは修道院に入ってからなんだよね。
修道院の院長が高レベルの鑑定眼持ちだったのと、修道院に奉納されていた聖なる錫杖──カドケウスの主に選ばれたお蔭なんだ。
本人の努力もだけど、院長の丁寧な指導とカドケウスの力添えもあって、シャルルは一年も経たないうちにあらゆる魔法をマスターするんだ。
魔法を使うようになってから魔力の循環が正常になって体重も落ちるし、傾国の美女と名高い母親によく似た美貌と「教皇」の称号を手に入れるんだ。
「教皇」の称号は古の勇者と女神の子孫の血統にのみ現れる特別な称号なんだ。
今の教皇さまは87代目で、僕の母方の大伯父さまがその座に就いているんだよ。
さて、ここいらで今の僕のステータスを確認しよう。
「ステータスオープン!」
本当は口に出して言わなくてもステータス画面、出るんだけどね。
一度言ってみたかったんだ。
異世界転生のご醍醐味だよね。
***
シャルル・ド・ブランシュール
(本名 アマデウス・シャルル・ド・フォーティス)
5歳 転生者
アステリア教皇国フォーティス大公家三男
フルール王国・ブランシュール魔法伯の孫
称号 次期教皇(88代目)アマデウス13世
女神の愛し子
精霊王の愛し子
特殊スキル 神眼 加護 祝福 無詠唱 転移 亜空間収納
スキル 付与 結界 治癒 浄化 錬金術 隠蔽 認識阻害
属性 聖 無
体力 50
魔力 18250/50
状態異常 魔力詰まり
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秘めた実力が開花する前に称号が出ちゃってるんだけど、バグじゃないよね?
あと、魔力が18250/50とか、文字化けじゃないよね?




