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断罪される悪役で当て馬な仔ブタ令息に転生した僕の日常  作者: 藍生らぱん
第一部

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19/26

閑話 モノローグ


**アンディ視点**


俺には前世の記憶がある。

前世の俺はれっきとした男で、アンドラーシュという名前だった。

ややこしいことに、今の俺の実母の双子の兄だった。


流行り病にかかって死にかけた時に、前世の記憶がドバっと流れ込んできて、そのショックで更にニ三日寝込んだ。


前世と今の記憶を整理して、統合して、まず一番目に驚いたのが今の両親。

前世の双子の妹と親友が結婚して今の俺が生まれて、そして俺が三歳の頃に離婚したんだよな。

妹の特殊性癖を考えても、二人が一時でもそういう関係になるなんて、全く想像できない。

しかし、そういう関係になったから今の俺がいるわけで、少し、いや、かなり複雑な気分だ。


二番目に驚いたのは、前世の俺の死後に「勇者」の称号が教皇国から授与されたことだ。

死んでから貰っても意味が無いけど、まあ、もらっちまったもんは仕方ない。

俺は生きてるうちに「勇者」になりたかった。

まあ、でもそれはまた一から目指せばいい。

だが母国の、前世の俺に対する評価とテンションがおかしい。


「悲劇の勇者」って誰?


前世の俺は勝手に「悲劇の勇者」とか「救国の英雄」に祭り上げられていた。

アゼルスタン王国初の「勇者」だからお祭り騒ぎになるのは仕方ない。

だが、演劇とか絵本とか小説とかで俺が主人公の物語が好き勝手に上演されたり、出版されている。

話の内容は一部事実で、9割以上嘘っぱちだ。

会ったことも無い王女との悲恋とか、魔王を倒したとか、勝手に作ってんじゃねぇよ!


俺は、俺の半身でもある妹のマリーを助けたかっただけだ。


流行り病で死にかけてたマリーを救うために魔獣を狩って、時間がないから焦ってヘマして呪いにかかってしまった。

でも、マリーは助かったから、あの時の俺はそれだけで満足して死んだんだ。

だからあの時だけは、大勢の人を助けたいとか、みんなの役に立ちたいとか、そういう博愛主義的な気持ちは皆無だった。


あの時の俺はマリーの事だけでいっぱいだったんだ。


ただ、狩った魔獣が通常より異様にデカかったお陰で、その角から作れる特効薬がたくさんできただけだ。

その薬を作ったのは親友のジャンの親父さんだから、「救国の英雄」はジャンの親父さんの方が相応しいと思うぞ。


あと、驚いたというか、今の俺も困ってるのは、前世の俺の絵姿がいまだに土産物屋で売られていることだ。

今世の俺は、前世の俺と同じ顔で、髪や目の色も同じだ。

そのせいでどこに行っても身バレするから、気軽に街に遊びに行けなかった。

あと教会のバザーで、貴族の子供たちがボランティアで演劇するとかで、前世の俺の役を今世の俺がさせられたりすることが多かった。

姪で顔がそっくりだから集客が半端なかったのは言うまでもないが、脚本が万人好みに百パーセント捏造されたものだった。

勘弁してくれ・・・


今世の俺は記憶があるせいで、前世の俺の作られた虚像にフィーバーしてる母国が煩わしいし、愛国心も持てなくなってしまった。

そして、「悲劇の勇者」マニアの三バカ王子の婚約者候補にまでされて、我慢の限界だった。


主のいない聖具は何年か周期で各国に展示されるイベントがある。

俺は一か八かでそのイベントの見学に行った。

聖具に選ばれれば国を出られる。

とにかく、俺は「令嬢」を辞めたかったんだ。


聖具の展示場に入った瞬間、俺は前世の俺の相棒「聖なる慈悲の剣(ミセリコルデ)」しか目に入らなかった。

相棒も俺に気づくと、真直ぐに俺の元に飛び込んできた。

「アンディ!」

「ルディ、また俺と一緒にいてくれるか?」

「私はアンディの魂と契約したんです。だから、私の主は何度生まれ変わってもアンディだけです!」

俺とミセリコルデは契約を交わし、再び相棒となった。


ミセリコルデ──ルディと共に聖騎士団の団長になっていたベルナールの所へ行ったら、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたのが笑えた。


ベルナールにも誰にも俺の前世が「アンドラーシュ」だったことは話していないし話すつもりもない。

今の俺は「アンドレア」で女で子供で、「アンドラーシュ」とは別人だ。


「勇者」になる夢は今も消えてない。

だが、今の俺は母国をスタンピードの脅威から護るために勇者になりたかった「アンドラーシュ」じゃない。

俺は、俺自身のために「勇者」になりたい。


そして俺は次期教皇の、シャルルを護ると決めた。

どんなことにも一生懸命で、誰かの為に心から祈りを捧げられる清廉潔白な稀有な魂を持った女神の愛し子。


俺はシャルルの心の平穏を守りたい。

シャルルが泣きたい時は胸を貸して、怒った時はうっぷん晴らしにつきあって、嬉しいときは一緒に喜んで、仕事ばっかりで疲れたときは遊びに連れていってやる。


そのために身も心も、漢の中の漢に俺はなる!



補足とか余談


アンディ君にとって「勇者」は「漢の中の漢」で「最強」というイメージです。

なので前世の親友で今世の実父であるベルナールを尊敬しています。


アンディ君は友情に熱い熱血脳筋野郎。

今世も前世も、色恋には疎く興味も無い無性愛者寄りのキャラクターです。


アンディ君の前世の双子の妹で今世の実母マルグリット(マリー)は、腐女子→貴腐人。

推しCPがベルナール×アンドラーシュの薄い本を作っていた腐界の伝道師。


アンディ君はシスコンなので、マルグリットのこの行動を特殊性癖だと思っているが、マリーが楽しいならいっか、で、否定せずに好きにさせている。


マリーは半身である兄の死後、もの凄い喪失感の中、うっかりベルナールに食われてデキ婚。

ベルナールはアンドラーシュの妹がずっと好きで、彼女の特殊性癖を満たしてあげつつ、爽やかな仮面の裏で虎視眈々と隙を狙っていたのでした。


離婚はアゼルスタンの勇者フィーバーに不安を覚え、アンドラーシュにそっくりなアンディ君の逃げ道を合法的に国外に作る為です。

マルグリッドがアンディ君を親権放棄&廃嫡した時点で、自動的にベルナールの籍に入るように神殿を通して魔法契約していました。


ベルナールの実家レイモン家は教皇国の侯爵家で、聖者や枢機卿を多数輩出している名門。

現侯爵はベルナールの父で、母である侯爵夫人はシャルル祖父と現教皇の姉。


マルグリットはアンディ君を廃嫡して父親の籍に移したことを王家にグチグチ言われているので、爵位と領地を返上して教皇国のベルナールのところに引っ越す準備をしています。


「聖騎士団は見た目も実力も人柄も最高な漢たちだらけ。新しい萌えと推しCPを見つけるわ!」

と、鼻息が荒くなってます。


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