ep95 竜王戦 其の四
「神剣よッ!!!」
そんな声が聞こえた。第六感にも近い危機感からその方向に目を向けると輝く剣をお振り下ろした男性プレイヤー。
いやまて、いつの間にそんなに近付いた?というか、斬撃が早い。避けれない。
「ぐっぅ!!」
体力がゴリッと削れた。
いったい。てか早い。爪を繰り出しても避けられる。ガントレット女のようなプレイヤースキルに頼ったいなし方じゃない。まさか、「憤怒」を使っていないとはいえこの状態の私よりもステータスが高い?
瞬時にこの場の誰よりもこいつの警戒レベルを引き上げる。
飛び上がると、地面に向けて………というか、この飛び入り参加してきた男めがけてスキルを放つ。
「竜の息吹ッ!!」
熱線が放射され、地面を焼き焦がす。攻撃に巻き込まれて何人かのプレイヤーがポリゴン片になって消えていくが、肝心のあいつの姿が見えない。今ので倒せてくれたならありがたいけど──
「ッ!!」
咄嗟に身をひねる。どうやら全力で上空へ飛んで回避しつつ攻撃してきたようだ。だが、空中では私の方が機動力がある。今の攻撃も避けられたし………は?
私のHPが減少し、落下を始めた。視界の情報から察するに翼をやられたようだ。だが待ておかしい。私は攻撃を食らってなどいない。急にやってきた光った剣を持った乱入者………光った剣の男と呼ぼう。そいつの攻撃も回避したし、私に当たりそうな魔法が飛んでくる様子もなかった。
ドスン、と落下し微かにダメージを受ける。私の周囲に展開するプレイヤー達を見ると、その数は10人と少し。最初と比べればかなり減った方だが、ガントレット女と未知の光った剣の男がいる中で殲滅できるか?横目で確認したHPゲージは5割を少し切った程度。
「畳みかけるぞッ!!!」
そんな掛け声のもと、群がるプレイヤー達。この位置はまずい、どこかを突破しなければ。ひと際脆そうな部分に突撃をかけると、素早く光った剣の男が回り込み、剣を振るう。それに伴い体力が減少する。
まただ、いくら普段よりも大きな体とはいえ今のもしっかりと避けれたはずだ。じゃあさっきの空中の攻撃もこいつのせいか。スキルか?剣の効果か?
「クソッ!うっとおしい!!」
光った剣の男に攻撃を仕掛けるが、素早く避けられ、当たりそうなものは横から割り込んできたガントレット女に逸らされる。しかし、私の攻撃をそらした女には「龍化」前よりも手ごたえがある。このまま押し切ればこいつは殺せる。
「っぐ……」
前の二人に集中しすぎた!背後から攻撃してきたプレイヤーの攻撃をもろに受けてしまい、体力が減少する。すぐさま振り返り、その勢いのまま攻撃してきたプレイヤー達のうち2人を弾き飛ばす。そのまま勢いを殺さずに一回転し、私の背を見たことで攻勢に出ようとしていた光った剣の男に攻撃を繰り出す。
繰り出した爪は光った剣の男に剣で防がれたが、これを吹き飛ばした。正直、思ったより簡単に吹き飛んだ。AGIのステータス的に受けられて止められるか、吹き飛ばすにしてももう少し抵抗を感じるかとも思ったのだが、思いのほか軽く吹き飛んでいった。AGI特化とかだったのだろうか?
ついでに、隣にいたガントレット女に上から爪を叩きつける。やったら固い銀のガントレットと剣で防がれるが、流石にSTRが違う。そのまま力を込めて押しつぶすと、グシャッという音とともに体力が全損し、ポリゴン片になった。
その微かな隙に攻撃を仕掛けて来ていたプレイヤーを弾き飛ばし、叩きつける。
「ッ!!!!」
素早く飛び込んできた光る剣線を回避する。こいつはほんとに早い。何なんだよほんとに。しかし今度は理不尽なダメージはなかった。そのまま2度。3度と攻撃を避けて4度目の斬撃を回避したところでダメージ判定が発生し……なるほど、わかってきたぞ。おそらくは、斬撃が飛んでいるのだろう。この手のゲームではよくあるやつであるが、ほとんど透明な斬撃を飛ばしているのがたちが悪い。おまけに、この飛ぶ斬撃が結構痛いのもめんどくさいポイントだ。だがまあ大丈夫だ、ひとまずこいつの斬撃だけ避け方を工夫すればどうとでも……。
「え?」
私のHPが全損した。
「……ぁ」
「竜化」による体力の減少、積み重なったダメージ、おそらくはさっきの飛ぶ斬撃が決定打だ。え、ここで終わり?これで終わり?マジか。いや………マジか。
砕けていく体が───その崩壊を止めた
「え?」
「アイテム、再生の命石。これ、他人にも使えるんですよね、実は」
声のした方に視線を向けると、フカセツさんが得意げな顔で立っていた。
なるほど………なるほど?口ぶりから判断して、私はフカセツさんに蘇生玉を使ってもらって蘇生したようだ。だがおかしい、フカセツさんは前回のイベントでは蘇生玉を貰える順位に入るどころか、参加すらしていなかったような………。
そんな心の声が顔に出ていたのか、フカセツさんが説明してくれる。
「大金を積んだら売ってくれる方がいましてね」
「ほ、ほう……?」
な、なるほど……いや、色々言いたいことはあるが思考を切り替えよう。今は戦闘中だ。スキルや防具は軒並みクールタイム。つまり………私は今一番弱い状態だ。そんな中で、人数はだいぶ減ったとはいえこいつらの相手をするのは正直きつい。特にあのやたら早いやつが辛い。さて、どうするか。
「そして………「傲慢」」
フカセツさんがそう呟いたとき………私のスキル、防具にかかったクールタイムがすべて消失した。
「え……………ふ、ふふふ」
なるほどなるほど、すべての質問は後回しだ。とりあえず、現状を受け入れ、動こう。
「「竜化」「龍化」ユーケイ、「AGI」だ……そして、「憤怒」」




